脱・ミクロ視点の防災・災害時対応
—避難所アセスメントの経験から『避難所力』の向上を考える—
「つなプロ」の避難所アセスメントの経験をこれからの災害対応に活かしていくため、
つなプロと日本財団の共催により、8月3日(金)に上記
「避難所力の向上を考える」フォーラムを開催しました。
当日は自治体の防災担当者、地域の自主防災組織の方や、
地域防災や災害支援に取り組むNPO、企業など計56名の方々にご参加いただきました。
★当日のツイッター中継内容を下記でご覧いただけます。
http://togetter.com/li/349743
★日本財団さんのfacebookでも紹介されました。
下記は当日の内容の記録です。
(登壇者資料および上記ツイッター中継から一部引用)
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【当日の次第と内容のポイント】
≪第1部≫ 基本報告
■「避難生活で被害を拡大しないために 〜避難所以降の支援を本気で考える〜」
ダイバーシティ研究所 代表理事/つなプロ代表幹事 田村太郎
(*資料は本記事末尾添付のPDFをご覧ください)
・「誰も死なない避難所」をつくろう
国内の災害時対応は、災害に直接起因する被害から避難生活のマネジメント不足による被害へ。
東日本大震災の関連死は1500人以上(半数以上が避難中または避難所での死者)。
・水害型モデルの限界と、指定避難所の収容力不足
・ 体力・若さに依存しない避難所(初期)運営を。
・避難生活で被害を拡大しないために必要な「3つの力」
①高齢化率50%でも最初の1週間を乗り切れる「避難所力」。
体力のある支援者がいなくても分配できる救援物資の工夫や指定避難所の見直し(遠くの小学校より近くの集会所)
避難所のUD化は必須!
②避難所の全体像を把握し適切にニーズマッチングできる「アセスメント力」。
必要なのは個人情報ではなくニーズ情報。
避難所に足りないものを発見するアセスメントのルール整備。
避難所で死者を出さないことを目標に専門的な支援メニューを開発する。
③実践的で具体的な訓練の実施と支援人材の育成による「広域連携力」。
1週間以上の生活を想定した「宿泊型避難所運営訓練」が有効。
外部からの支援者受入れを前提とした「コーディネートセンター」訓練も必要。
アセスメントできる人材の育成と派遣のスキームづくり。
次の災害で公開しないために、しくみづくりとトレーニングを今すぐはじめよう!
■「『つなプロ』がめざしたこと、できたこと、できなかったこと:
緊急時の「避難所力」を高める平時の取組み」
IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者/つなプロ代表幹事 川北秀人
(*資料はこちらからダウンロード可能です)
・被災者全員に共通のニーズに対しては、官・産・民の総力で大量・広域に対応することが必要。
少数の被災者の特別なニーズには、官・産・民の専門性をピンポイントでつなぐことが必要。
・軽度の要介護者や精神的要支援者、外国人、障碍者、アレルギー患者、難病患者、高齢者などの
所在を確認し、個別支援につなげること。
・つなプロが目指したのは、「把握→つなぎ→解決」。
特定の課題を持つ少数者が、避難所では多数者になりかわる。
・避難支援にも避難所運営にも(本人・家族合意のもとでの)個人情報の共有が不可欠。
「誰かが」じゃなくて「自分たち」で!「当事者力」と「協働」が不可欠。
「避難」だけじゃなく「避難所運営」も訓練を。
・避難所に求められる役割は時間とともに変化する。
「移(れ)る人」と「残る(しかない)人」の二分化。
一ヶ月後からは「残る(しかない)人」が固定化するので専門家との連携が不可欠。
・自治会・町内会は、行事を半減して事業(=福祉+経済)を!
①「小規模多機能」自治
→行政機能の集約化を補い、住民減少・高齢化などに伴って必要性が高まる
安全・安心の確保のための「適地適作(策)」型の地域づくりを進めよう!
②共通の「基本機能」と独自の「魅力づくり」を!
→最小限の安全・安心の維持/文化・伝統の継承/経済的な競争力の維持・向上
・今後は、即応する姿勢を持つ団体との平時からの連携が必要。
ニーズ別の専門団体との連携、(外部との)相互補完原則の共有、人的つながりの共有、
「相互支援」協定の締結など。
≪第2部≫ ラウンドテーブル:これから必要とされる「避難所力」とは
■「大都市・港区の「避難所力」〜震災後の対応状況と課題」
横尾俊成氏(港区議会議員/街をつなぐ防災マガジン「Standby」発行人)
(横尾さん登壇資料はこちらからご覧いただけます。(PDF/GoogleDocument利用))
・帰宅困難者の想定と対応
首都圏直下型地震が起きた場合、都内に300万人超が溢れる!
東京都の対応→帰宅支援ステーションの設置。
港区の対応→駅周辺滞留者対策推進協議会の設置。
・港区の食料は?
区民20万人に対して区のサポートは4万食。
想定する港区内帰宅困難者45万人に対する区のサポートは5万食。
避難所(小中学校)の数は減少傾向、給水車は都内にわずか10台しかない。
・事業者の対策は?
BCP(事業継続計画)への対応・地域防災への取り組みは道半ば。
BCP対策をしていない企業では「ノウハウがわからない」という回答が最も多い(42%)。
港区と防災対策基本条例を結んだ企業は25%程度。
・災害時要援護者への対応は?
港区は住民の約2割(4万人)が高齢者。
・区からの情報や備蓄の受け渡し−すべてが「町会・自治会経由」。
加入していない場合、区の提供する物品や情報などを受けづらい体制になっている。
・町会・自治会の役割と防災訓練
区民20万人に対し、H23年度の防災訓練参加者合計は約6,500人=全体のわずか3%。
特に若者の参加率が低い。子どもたちを地域でどう守っていくのか。
・行政ができることには限界がある。帰宅困難者対策も含め対応は道半ば。
今ある施策はすべて自治会・町会頼り。高齢化が進み、既存の仕組みが機能しなくなっている。
大都市(港区)の避難所力は、まだまだ弱い!
・今後取るべき対策
避難所運営や備蓄など行政が賄ってきたものを、一部、民間(企業、NPOなど)が担っていく。
防災リーダーを育成し、防災に携わる人材を増やす。
町会・自治会「+α」の新しい防災×コミュニティのカタチが必要。
そのツールの一つとして、街をつなぐ防災情報マガジン「Standby」を発行予定。
■「災害支援を通して見えたもの〜役に立ちたいという思いから、すべては始まる〜」
生川慎二氏(富士通株式会社 ソーシャルクラウド事業開発室)
(生川さん登壇資料はこちらからご覧いただけます。(PDF/GoogleDocument利用))
・3.11震災発生後、すぐに自治体向けの企画書をつくり、15日には災害対策特別チームを発足した。
・NPOから避難所運営と情報滞留についての課題が伝えられ、協力依頼を受けた。
情報インフラ整備力が不足していると感じたので、我々の専門性が生きると感じた。
・緊急時こそ実践知が生かされる。考えてから行動しては間に合わない。行動しながら考える。
・特定の美談に惑わされず、「欲しい人に欲しい物を欲しい時に届ける」には、システムが必要。
それをすぐにできたのが、つなプロの素晴らしかった点
・私たちも「つなプロの一員」として活動現場に乗り込み、一緒に考え、臨機応変に行動していった。
システムだけ提供してもダメ。情報が共有されなければ意味が無い。
・企業がNPOと連携することの意義
NPOには突破力、スピードがあるが、慢性的な人手不足や情報発信力が弱い。
そこは企業の得意技(人もいるし、IT技術も高い)。
・NPOと企業が連携するために
いっしょに現場で活動すること、お互いの活動範囲に垣根をつくらないこと、
いっしょに考えて臨機応変に対応すること、同国に暮らす市民として行動すること。
・NPOと企業の得意技がコラボすることで、活動の「社会的価値」は最大化する!
・つなプロの活動から生まれた情報管理・マッチングのノウハウは、耕作放棄地での農家マッチングや
訪問看護士健康調査、被災地派遣医師団のスキルアップ研修など、いろいろなところで応用できる。
・実証フィールドでの人脈から思わぬ発見がある。多くの社会モデルにおいて、理論は後付け。
動いて見ることからわかることが大事。
・これからは、共通価値の創造が大事。経済的価値と社会的価値の同時実現。
社会的ニーズに対応することで、社会的価値を想像し、経済的価値も創造するアプローチを!
(以上)
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