ウォーキングの文化史

日 時 平成24年11月29日(木)
場 所 西宮大学交流センター
講 師 中島俊郎氏(甲南大学教授)
 人にとって「歩くこと」はどのような意味をもつのでしょうか。
 私達は目的がないとなかなか歩けません。
 たとえば、ヨーロッパではエルサレムへの巡礼とか、日本では
四国四十八ヶ所巡り等から、単に健康のためもあるでしょう。
 この「歩行」には、①自己実現として、②哲学的思索として、
③詩作として、④肉体誇示として、⑤冥想として等々、いくつかの意味がある由です。
 ①は、小説や旅行記を書くためとか、精神的苦痛(失恋や離婚等)から立ち直るためもあるでしょう。
 ②は、単に歩くことが好きで、その事によって様々な世の中の不安定さを知ることにあるようです。
 ③は、未知の世界にふれて新しい詩や歌を創作することで、あのイギリスのワーズワスの詩も、若いころに湖水地方を歩きながら創ったものは非常に評価が高く、今でも世界中で愛されていますが、晩年ロンドンに引っ込んでから頭の中だけで創ったものは実に平凡なようです。
 ④は、競歩のようなもので、肉体の競い合いでしょう。
 ⑤は、精神を高めるためにアルプス等の雪山を歩き、少しでも神に近づく行為とも受け取れます。
 なお、今日の「ウインドショッピング」も歩行の一種でしょうか。
 (写真は、ワーズワスの妹・ドロシーの日記の表紙です。)