『大阪歴史博物館と難波宮跡』(現地見学)

(%緑点%) 前期講座(歴史コース)の第5回講義の報告です。
*右の写真は、大阪歴史博物館1Fのエントランスホールです。(中尾先生から今日のスケジュールなどについて説明)。
・日時:4月19日(金)午前10時〜午後3時15分
・【現地見学の内容】:〈午前〉大阪歴史博物館[地下1F(地下遺構)−10F(難波宮の時代展示:大極殿、山根徳太郎博士のコーナーなど)]…(昼食)…〈午後〉難波宮跡[八角堂跡、大極殿跡など]−大阪文化財研究所・展示室
・参加者:36名
・講師:中尾 芳治先生(元帝塚山学院大学教授)
・また、長山雅一所長(大阪文化財研究所)、寺井誠氏・村元健一氏(大阪歴史博物館・学芸員)にも案内をいただき、お礼申し上げます。

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(%エンピツ%) 大阪歴史博物館「地下遺構」 (地下1F)
・地下に残る遺構展示室を学芸員の案内で見学。
・博物館の敷地には、倉庫跡や石組みの水利施設跡が、掘り出したままの状態で保存されています。また、大量の土器、木簡、人形(ひとがた)・舟形(ふながた)の木製品や土馬(どば)などの祭祀具が出土しています。

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(%エンピツ%)大阪歴史博物館 [難波宮の時代・大極殿、山根徳太郎博士のコーナーなど](10F)
・奈良時代の難波宮の大極殿を中尾先生の案内で見学。・・・原寸大復元の直径70センチもある朱塗りの円柱が立ち並び、官人たちが整列。大スクリーンでは宮廷の儀式を紹介。
・また、10階には、難波宮跡発掘に情熱をかたむけた山根徳太郎博士の研究を紹介する展示コーナーがあり、見学。
・博物館10階からは、難波宮跡公園の全景がよく見えます。また、今日は快晴で、生駒山系・二上山・金剛山系がくっきりと見え、古代の難波宮をイメージしました。

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(%エンピツ%) 難波宮跡「八角堂跡」
・午後からは、難波宮跡公園を見学。(右の写真は、前期の八角殿跡。八角形に柱がめぐる建物で、周囲を回廊で囲んでいます。東西に二つあります。)
難波宮
「1954年から始まった発掘調査によって、前後2時期の宮殿跡が見つかっています。前期の難波宮は、大化改新の後、遷都された孝徳天皇の難波長柄豊碕宮と考えられており、後期難波宮は、奈良時代に一時首都にもなった聖武天皇の難波宮とされています。遺跡としての難波宮の特徴は、ほぼ同じ場所に、2時期の遺構が重なり合って存在しているところにあります。」
○上層…「後期難波宮跡」(奈良時代の瓦伴出。後期の建物は地面に据えた礎石の上に柱を立てる方式で造営。)、下層…「前期難波宮跡」(前期の建物は、地面に穴を掘って柱を立てる掘立柱で造営。全面に火災跡[天武・朱鳥元年(686)に全焼]。)

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(%エンピツ%) 難波宮跡「後期の大極殿基壇跡」
*右の写真は、大極殿基壇跡に上がり、中尾先生の説明を聞いているところです。
・「後期難波宮」では、天皇がまつりごとをする中心の建物として、「大極殿」が建てられました。⇒石造りの土台「基壇(きだん)」は高さ2m以上あり、復元されています。この上に大極殿が作られ、天皇が座る高御座(たかみくら)も置かれました。

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*あとがき*
(1)「難波宮」についての講義(中尾先生)は、今日は第3回(現地見学)になります。
【第1回】『古代の難波と難波宮Ⅰ』(平成24年5月8日)
・「古代史(古事記・日本書紀・万葉集)にみる難波宮」、「難波遷都の理由ー東アジアの国際情勢、難波の地理的特質−」、「難波宮発掘調査」
【第2回】『古代の難波と難波宮Ⅱ』(平成24年12月4日)
・「難波宮には前期と後期がある」、「土器と木簡の出土」、「前期難波宮は孝徳朝?」
(2)中尾 芳治先生のプロフィール
・1960年より30年間、大阪市難波宮跡発掘調査・研究とその保存・環境整備事業に従事
・1991年〜2004年、帝塚山学院大学文学部教授。文学博士
・1991年よりカンボジア・アンコール遺跡の発掘調査・保存修理活動に参加
・現在:(公財)京都府埋蔵文化財調査研究センター理事、難波宮跡整備計画委員
・主な著書:『難波京』・『難波宮の研究』、『シンポジウム古代の難波と難波宮』など
(3)難波宮跡は、前期と後期の遺構が重なっているので、それを表示するために、いろいろ工夫して復元しています。⇒今日の現地見学で初めて知りました。
(4)史跡の保存と環境整備には、時間と費用がかなりかかります。
★難波宮跡環境整備事業(1964年〜2011年7月現在)
・保存・環境整備事業に伴う公有地化−買い上げ費用143億8000万円
・整備事業−5億8000万円
(5)今後の課題は、史跡の整備と活用です。(中尾先生)
・特に活用について、市民・NPO・企業・行政の連携による検討が必要。