カゼを引いてから、なかなか調子が戻らない。
昼間はそうでもないのだが、夜になると、
咳が出始め、まるで喘息の発作のように、
長く咳き込み、眠るに眠れない。
何度も、夜中に咳に起こされたりして、
思い切って、お医者さんに行った。
かっては、このF先生が我が家のホームドクター的な
存在だった。かれこれ40年近いお付き合いになる。
父が倒れたとき駆けつけてくれたのも、
何かといえば母が通っていたのも、
主人の結核を見つけてくれたのも、
子供たちがお世話になったのも、
F先生だった。
最近は、総合病院的なところに行くことが多く、
F医院を訪れたのは、10年ぶりくらいになるだろうか。
ゆっくりと問診してから、トントンと胸と背中を打診。
それから聴診器を当てて、「深呼吸してください」
とか、「息を最後まで吐ききってください」とか、
長い間、心音を聴いてくれた。
そしておもむろに、
単なるカゼですね、喘息は大丈夫です、との診断。
「少しだけ薬を出しておきましょう」。
診察を受けたその晩から、あれほど私を悩ませていた咳が、
ピタっとおさまり、グスッリ眠れたのだった。
こういう五感を駆使した診察はいいですね。
ゆっくりと診てもらった満足感が、
病気を吹き飛ばしてくれるような気がします。