昨年5月、105歳で亡くなられた山口伊太郎さんが
ライフワークとして取り組んでこられた
『源氏物語錦織絵巻』第4巻が
山口さんの遺志を受け継いだ織物職人の手によって仕上げられ、
40年近い歳月をかけて、ついに全巻が完成したそうです。
伊太郎さんは、
明治34年(1901年)京都の西陣織職人の11人兄弟の長男として生まれました。
母親のお腹にいる時から機織の音を聞き、5歳には家業を手伝い、
小学校を卒業してすぐ、織元のところへ丁稚奉公に行かれたそうです。
18歳でリストラにあい独立。帯の製造に若い感性を持ち込んで、
注目を集めました。
『源氏物語絵巻』を織物にして残す決心をしたのが、70歳の時といいますから、
まさに壮大なライフワークと言えるでしょう。
「派手な色目は、100年先、200年先に色が落ち着くようにして」あるそうです。
これまでの作品は、
ジャガード織を西陣にもたらしたフランス・リオンのギメ博物館にも寄贈されています。
にっちがインタビューしたのは、2002年の春。
柴色(ふしいろ)の長襦袢に海松茶(みるちゃ)の襟、そして煤竹色(すすたけいろ)の
羽織の紐と小粋な着こなしに驚いたものです。
印象に残った言葉は、
「一番大切にしてきたのは女性への恋ごころです。
男には色香がないとあきまへん」
百歳を越えて尚、色香を失わない伊太郎さんの姿に感動したものです。
完成した全4巻は京都の相国寺承天閣美術館で4/26〜7月6日まで展示されます。