3月4日付けの朝日新聞に
辻本勇さんの死亡記事が出ていました。86歳。
昨年末に、JR芦屋駅でバッタリお会いした時は、
お元気な様子だったので、まさかとショックを受けました。
辻本さんとお知り合いになったのは、2000年4月。
陶芸家富本憲吉の研究者としてでした。
辻本さんが出版された『近代の陶工・富本憲吉』(ふたばらいふ新書)
をにっち誌上(Vol.6 2000/05発行)で紹介したのがきっかけでした。
辻本さんは、1974年、私財を投じて故郷の奈良県安堵町(あんどちょう)に、
同郷の人間国宝、富本憲吉の記念館を設立した方。
にっちのスタッフは、朴訥な語り口の辻本さんにすっかり魅せられ、
バスを仕立てて、館長直々の解説付きバス遠足を決行したりしたものです。
富本憲吉の生家を改装して作られた記念館は、
「作品こそわが墓なり」と遺言した憲吉の作品が、
年代順に並べられ、今にも憲吉自身に出会えそうな、
ゆったりと落ち着いたたたずまいでした。
(にっちVol.13 2001/07発行)
事務所のご近所(といっても奥池ですが)にお住まいということもあって、
カメラ片手におうかがいし、
「独特の眼力により、とにかく百点集める」と情熱を燃やされた、
様々なコレクションを拝見。
誌上に紹介させていただきました。
これは明治時代の引札。今で言うチラシでしょうか。
これらが、一軒一軒の家に投げ込まれたそうです。
(にっちVol.16. 2002/01発行)
そして枕(にっちVol.18 2002/05発行)。
螺鈿を施した高枕に魅せられて、
香枕や南天木枕、箱枕などの、
枕類にのめりこまれたようです。
草創期のにっちを支えてくださった方が、
また逝かれ、淋しい限りです。
辻本さん、お世話になりました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。