2009年春号(Vol.54)の紹介 ③ 「一行詩」の勧め

1990年代にブームとなった「一行詩」を覚えておられますか?
「父よ母よ」「息子よ娘よ」といったタイトルの本が、
書店にたくさん並んでいたのが記憶に残っています。

一行詩といえば、俳句や川柳が浮かびますが、
高校生たちは、五七五の世界でうまく自分を表現することが出来ない。
そこで、三重県立津東高校で教鞭をとっていた吉村英夫氏が編み出したのが、
「一行詩」です。

「父」「母」「友達」などのテーマを与えて、
自由に詩を書かせてみると、感性豊かな世界が広がる。
それらをまとめて、両親にも見せ、今度は、
「息子」「娘」で書いてもらう、と発展し、
全国的なブームになったのです。

今回お会いした後藤桂子先生は、
創立116年の伝統を誇るキリスト教系の女子高、
日ノ本学園高等学校の国語の先生。
「げんきKOBE」代表の副島 茂さんのご紹介を受けて
姫路にまで出向きました。

後藤先生は、卒業文集に「一行詩」を取り入れました。

父よ(100回生)
● 背中をかいてもらうのが好きだよね。
 嫁ぐ時、思い出すだろうな、父の背中
● お父さん、男の子と話しているとき、電話の線 ぬくのやめてください。
 いずれ子供というものは、親元離れるんですよ。
● 「風呂」「飯」「コーヒー」 どこにでもいそうなオッサンだな

と、どこか牧歌的です。12年後の文集では、

父よ(112回生)
● ここにおれるのもおとうのおかげ 「ありがとう」って思ってるけど、
 おとうを前にしたら「キモイ!!」に変わるねん 人って不思議
● アイフルのカードがあったのが 私を不安にさせたんだよ
● 子供心がわからなくて 当然だよね
 だってお父さんは親歴3年生 私は子供歴17年生

サラリーローンや離婚などが、
一般的になってきたことをうかがわせます。
この文集を読んだ、両親からも娘たちに宛てて「一行詩」が寄せられました。

父より娘へ
● 娘よ 離れていてもあなたは父と母の潤滑油

母より娘へ
● 急がなくてもいいんやで 大人になるのなんか

こんな風に「一行詩」に絡めて、
家族間の風通しがよくなったり、
教師と生徒との垣根が低くなったりする
副産物が大きかった、
と後藤先生はおっしゃってました。

「げんきKOBE」さんは、早速、スタッフが、
「一行詩」を作られました。

母よ
● 今 私が人一倍元気なのは29歳で 心残し 早世した
 あなたの分も生かされているからでしょうか (72歳・女性)

父よ
● お風呂嫌いのお父さん せめて10日に1回はお風呂に入ってね 
 かゆいでしょ? (66歳・女性)

「一行詩」は手軽に作れるのが何より。
次号のにっちの読者欄は
「一行詩」で埋まってしまうかもしれません。