次号のために神戸大学保健学研究科の中村美優准教授を
取材させていただきました。
先生に勧められた本、
『妹になってしまった私の母さん—母と私の介護日記』
(高玉 多美子・鴨崎 節子著 駒草出版)を
読みました。
70歳くらいまで看護師として活躍していた節子さんが、
物忘れがひどくなり、73歳の時、アルツハイマーと診断されたのです。
娘の多美子さんが、デイサービスと組み合わせながら、
在宅介護をされ、日記を書くように勧めた、その記録です。
徐々に文章も筆跡も崩れていきますが、
(自筆ノートが画像のまま掲載されています)
認知症の方の不安一杯のこころの動きがわかって、
貴重な記録になっています。
『私は誰になっていくの?アルツハイマー病者からみた世界』
(クリスティーン・ボーデン著)
は若年性の認知症患者のこころの動きを知るのに貢献しましたが、
『妹になってしまった私の母さん』は
高齢になってから発症した人のこころを知ることが出来ます。
この本の後記の中で中村先生は、
「娘の多美子さんを姉と誤認することで節子さんは、
母親としての役割から解放されて、多美子さんに素直に甘え、
依存し、頼みの綱として安心して生きることが出来る」
と、解説されています。
社会や家族の中での役割の重さが、認知症患者の心の中で、
強いストレスになっていて、そのストレスを軽くするために、
人のこころが様々な適応の仕方を模索していることを指摘されていました。
この本を読んでいれば、認知症を発症した義母に、
もっと優しく向き合えたのに、と反省仕切りです。