夏バテの上に、事務所の改装や、
日常のバタバタが続き、
ブログの更新が延び延びになってしまいました。
今号のメインは、石飛幸三先生への特別インタビュー。
特別養護老人ホーム(特養)で常勤配置医をされているお医者さんです。
その石飛先生が、『「平穏死」のすすめ』と題された本を上梓されました。
石飛先生の言う「平穏死」は、
「穏やかな、自然な、いうなれば神の意志による死」のことです。
その基準は「口から食べられなくなったら、もう先が長くない状態」と明快です。
医学の発達によって、「死」の概念が揺れ動いている今日、
「平穏死」の考え方は、ストンと私の腑に落ちました。
石飛先生が赴任されたばかりの特養では、
入所者の平均年齢90歳、9割が認知症。
3割に嚥下障害があったそうです。
そして、肺炎の原因は大部分が誤嚥性。
それなのに介護保険では、摂食介助は約20分、
介護士の数も足らない現状では、
ゆっくりと慎重に食事の介助は出来ないそうです。
「あと、もう一口」が誤嚥につながるのです。
「『熱が出た、サァー、大変だ』と救急車を呼ぶ。
その裏には、人手が足りないという背景もあって、
病院へ送っておけば夜勤が安心、というところがあるわけです。
病院は来た患者を診ない訳にはいかない。
胃瘻にすれば点数になるし……。
結果、無駄な医療を一杯やってます」。
胃瘻をすれば、誤嚥性肺炎はなくなるのかと考えていたのですが、
違うのですね。量を間違えると、胃が受け付けずに、
気管に逆流して肺炎を起すのだそうです。
ところが、「誤嚥→肺炎→入院→胃瘻」の不毛な繰り返しが
まかり通っているのが現状だそうです。
殆どの入所者が、病院で最期を迎えていたのが、
石飛先生が入られてから、スタッフや家族と状況を共有し、
話し合い、施設での看取りがはじまりました。
平成19年度にはホームでの看取りが8割にまでなったそうです。
高齢のご家族がおられる方は、いつかこの問題に直面されるでしょう。
「口から食べるのはもう無理です。どうされますか?」
今からそのときに備えておく必要があるように思います。
「入所者に必要な事は、少しでも幸せに一日でも楽しく過ごせて、
静かに幕を閉じることです。
食べられなくなったら、その人の生命の限界が来ているということ。
三宅島では年寄りは食べられなくなったら最後は水だけ与える。
そうすれば精神が落ち着き、自然に戻ると言われている。
過剰な栄養や水分はあげない勇気も必要だ」
石飛先生の言葉をじっくりと噛みしめようと思います。