既存ストックの活用

先月、(財)関西社会経済研究所が「関西の住宅投資の現状と促進に向けた方向性-既存ストックの活用で『住宅先進地域』関西をめざせ-」という研究提言を行いました。

 主な提言の内容は
 ① ライフステージに合わせた住宅の供給によるミスマッチの解消
 ② 高齢者の安心居住の実現
 ③ 環境配慮型住宅の整備により既存住宅の質の向上
 ④ 良質な住宅の供給による中古住宅市場の活性化
 ⑤ 公営住宅のあり方の見直し

 私たちは、千里ニュータウンで戸建て住宅の空家を若い子育て世代に貸し出す活動をしています。これは、正に提言①に対する活動です。庭や広い間取りが必要な子育て世代が戸建て住宅に住むことができず、狭い間取りで安全で便利に住みたい高齢世代がマンションや高齢者住宅などの高齢者施設に上手く住みかえられないというミスマッチが全国いたるところで起こっています。

 また、私たちの高齢者に対する住み替え支援の活動は、提言②に対する活動です。高齢者には、安全で安心して暮らせる住み替え先の情報が圧倒的に不足しています。私たちが開催している高齢者向け施設の見学会では、毎回参加者の方々から「こんな施設は知らなかった。」という声を聞きます。

 そして、高齢者が住む戸建て住宅向けに提供しようとしているハウスドクターの制度は、提言④の一部をなすものです。定期的に住宅をチェックして、居住者が不便を感じたり困ったりしないように住宅についてアドバイスを行い、修繕やリフォームなどの住宅に加えた手入れの情報を住宅ごとに記録します。この記録によって、売却や賃借時にその住宅の正当な評価を行うことができます。

 研究機関が調査研究の成果として社会に発表した提言は、私たちや他の団体、民間会社などがすでに取り組み始めていますが、それらの取り組みを地域でまとめようなより大きな動きになっていないことで、成果に繋がっていないように思います。このあたりで、市や府などの行政が積極的に関わる必要があると感じています。