身体障がいの学生の就活事情

福祉ジャーナリストの安藤です。
今回は卒業=経済的な自立について、この頃の事情をレポートします。

特別支援教育の出口として〝就職〟があります。知的障がいなどで就業が困難なケースでなければ、社会に出て自活すること若者たちは夢見ます。監視?のない一人暮らしも楽しみ。

障がい者の求人状況は改善しています。2007年11月に厚生労働省が発表した障害者雇用状況(6月1日現在)によれば、障害者雇用促進法が報告を義務づけている従業員56人以上の一般企業で1.55%と過去最高を記録しています。ちなみに法定雇用率の1.8%を達成した企業は43.8%でした。

とくに従業員数1000人以上の大企業に限ると1.74%と法定雇用率に届きそうですが、中小企業では依然として低い雇用率となっています。

こうした雇用状況は就職を目指す学生たちに明るいニュースです。取材してみると、多くの身体障がいのある大学生が就職を現実の目標と捉えています。これが10年前ですと、かなわぬかもしれぬ憧れとしての話題でしたから、昔を知るものにはうれしい驚きです。

ところで、身体障がいのある大学生たちの就職活動はどうなっているのでしょうか。

1)大学の進路指導課で情報収集
大学3年生の夏、障がいのある先輩学生がどのような就職活動をしてきたのか調べることから就活は始まります。ここで内定、就職までの見通しをたてるのです。

2)就職活動サイトに登録する
障がいのある学生向けに求人情報を提供しているwebサイトがあります。クローバーナビwww.clover-navi.comが最大手。そのほか、サーナwww.web-sana.com、ゼネラルパートナーズhttp://work.generalpartners.co.jp、ユニバーサルハンズwww.uni-hands.netといった就活サイトがあります。

3)ハローワークで求人情報を探す
六本木ジョブパークhttp://job.gakusei.go.jp/F/F2000200.aspのような学生向けハローワークもあります。そこで障がい者向けの求人情報を探します。

4)企業説明会に参加する
障がい者向けの説明会もあります。開催情報は就職活動サイトなどで入手できます。

5)面接〜内定
障がい者向けの企業説明からエントリーしても入社試験は一般学生と一緒に行われるケースが多いようです。オフィスのバリアフリーや通勤条件などについては説明会や試験の初期で確認しておくことが大切です。

このように、障がいのある学生も一般的な就活と同じようなスケジュールで内定に至っています。しかし大きな違いは障がい者向けの求人情報があるということ。

能力があれば障がいは関係ないでしょと思われる方も多いでしょう。たしかに採用でも身体障がいによる優劣はないようです。しかし問題はバリアフリーなのです。車いすや重度障がいの場合では通勤経路やオフィスの環境が就業できるかを左右する最重要事項となっています。そして一人の学生がバリアフリーなオフィスを探すのは大変。同じ企業でも配属先でバリアフリー環境は異なりますからなおのこと。そのため、結果として重度の方ほど就職しにくいという状況もあります。

オフィスのバリアフリー環境を確かめる効率的な就活テクニックとして障がい者向け求人情報を活用するのです。

障がい者向け求人を出している企業=オフィスのバリアフリー度は高い

そんな図式が成立するわけです。

インターネットの普及により、パソコンを使う仕事を増えました。そしてパソコンはとてもユニバーサルデザインなツールですし、支援機器を使いこなすことで重度障がいの人でも扱えます。だから知識や能力があれば就業する機会はたくさんあります。それでも一番の問題はバリアフリー! 都心で働くには「自動車通勤が難しい」「古いオフィスビルが多く、トイレも狭い」といた制約もありますが、多くの企業、とくに大手企業は法定雇用率の目標もあり障がい者の雇用に積極的なため、時差通勤など就業するために融通しているケースも多いと聞きます。

さあ、就職して一人暮らしを目指しませんか。そして保護者のみなさん、将来=就職を見通して子どもの育ちに寄り添いましょう。