インクルージョン・メインストリーム・インテグレグレイションの違い

こんにちは。

(%王冠%)イラストライターの大枝です。(%王冠%)

今回はシャドウイングプロジェクトの第二段、
「デ・アンザ・カレッジの保育園におけるインクルーシブ保育」に
ついて記録しようと思いましたが、
その前に、

●インクルージョンinclusion
●メインストリームmainstreaming
●インテグレイションintegration

の定義について説明を加えておきたいと思います。
(日本の特別支援教育と比較する上でも、
知っておいて損はないと思うので・・・)。

インクルージョン・メインストリーミング・インテグレイションは
おおまかに言うと、どれも保育・教育の分野では、
「障碍のある子とない子が一緒のクラスで過ごしたり学んだりすること」を
意味します。
日本語に訳す場合でも、3つとも「統合保育・統合教育」って訳してるんじゃ
ないでしょうか。

では、この3つには厳密にどんな違いがあるのかというと——。

「メインストリーミングとインテグレイションは、
exchangeable(言い換え可能)な言葉であり、
ほぼ同じ意味で使われる」
といろんな文献に出ていました。
基本的な意味は、
「障碍のない子が通う通常学級にスペシャルニーズのクラスから
障碍のある子を招く」
こと。
単に「障碍のある子とない子を一緒のクラスに入れる(placeする)」ことが目的とされ、
障碍のある子に配慮した教材や環境を用意することは
特に念頭に置かれません。
つまり、障碍のある子は障碍のない子にあわせる必要がある、ということですね。
これらの言葉は、
1975年にAll Handicapped Children Act 障碍児法ができたころから
アメリカでは使われています。

ところで、
言い換え可能なメインストリーミングとインテグレイションですが、
実はここアメリカにおいては、微妙な違いがあるらしい。

アメリカ人にとって「インテグレイション」といえば、
一般的に黒人と白人の「人種統合」を指すそうなんですよ。
だから、保育・教育現場で使う「インテグレイション」は、
黒人と白人が一緒に授業を受けるという意味に理解する人が圧倒的に多い。
障碍児教育のことは学ばなくても、
歴史で人種統合のことはばっちり学びますからね。

ですから、障碍児の統合保育・教育の意味で「インテグレイション」を使う場合も
人権運動の一環として出てきた概念、というニュアンスを強く含むみたいです。
実際、アメリカの辞典を見ると、
Mainstreamingは障碍児統合教育とはっきり書かれ、
Integrationは、まず、人種統合が書かれ、そのあとに障碍児統合教育が出ています。

ちなみにメインストリーミングというのは、
通常クラスをメインストリーム(主流)として、そこに障碍のある子を合流させる
という意味で使われているようです。
(実際はあんまり意味は考えないで使ってるみたいですが)。

さて、ではインクルージョンは何かというと、
メインストリーミング・インテグレイションではお客さん(visitor)扱いだった障碍児を、
「通常クラスのフルタイムメンバーとして在籍させ、
ここから必要に応じてスペシャルニーズのクラスに通ってもらう」
という逆の概念で使われています。
フルタイムメンバーとして在籍してもらうために、
必要な教材、環境、教育法、補助教員などの利用や
言語療法士・作業療法士などとの連携が義務づけられています。
障碍児統合保育・教育がメインストリーミング・インテグレイションから
インクルージョンに転向したのは1990年ころかららしい。
(All Handicapped Children Actが1990年にIndividuals with Disabilities Education Act個別障害者教育法に改変されたころですね)。
さらに、インクルージョンは障碍のある子だけでなく、
人種や所得差なども関係なく、「すべての子どもが通常学級に在籍する」ことを
意味しています。

しかし、なぜか保育・教育内容はインクルージョンにシフトされているのに、
普通はメインストリーミングという言葉をみんな使ってるんですよ。
すでに、統合教育という言葉としてメインストリーミングが定着してしまっているからかもしれません。
慣れてないと大変混乱します。(^_^;)

さて、次回こそは、
デ・アンザ・カレッジの保育園の様子をお知らせしますね!