生活機能で分類するICFで支援プランを考える

福祉ジャーナリストの安藤です。
本年もよろしくお願いします。

本業?の介護関連で記事をまとめていたとき聞き慣れない用語と出くわしました。

「ICFでケアプランをまとめる」

・・・・・ICFって、何?

福祉ジャーナリストを名乗ってておきながら、これまでまったく知りませんでした。冷や汗ものです。大急ぎで、コッソリ調べます。

ICFとは2001年にWHO(世界保険機関)で採択された新しい〝人間の生活機能と障害の分類法〟なのだと知りました。International Classification of Functioning, Disability and Healthの頭文字ですね。日本語では、「国際生活機能分類」と訳されています。また、子ども向けのICFとして、ICF version for Children and Youth (ICF-CY,児童青年期版(仮訳))がWHOの関係会議で2006年に承認されています。

国もこの新しい分類法を活用すべく、すでに動き始めています。厚労省は2006年に社会保障審議会に専門委員会を設け、ICFに関する諸課題について検討を進めています。また中央教育審議会でも特別支援教育への活用がすでに検討されています。

さて、具体的なICFの内容です。

ICFの分類によると、ある人物はさまざまな要素が相互に関係している中、ある活動に参加することが制約されていると分析されます。分類要素には以下のようなものがあります。

心身機能 : 身体系の生理的機能(心理的機能を含む)
身体構造 : 器官、肢体とその構成部分などの、身体の解剖学的部分
活動 : 課題や行為の個人による遂行
参加 : 生活・人生場面への関わり
環境因子 : 人々が生活し,人生を送っている物的・社会的・態度的環境
個人因子 : 個人の人生や生活の特別な背景

支援する視点でみると、これまでは機能障がい、能力障がいや社会的制約などで分類されていたのとは違い、暮らしの背景や個人の意欲(希望)などをきちんとアセスメントしていくわけですね。「活動、参加、環境因子、個人因子」がその部分でしょう。そして分類結果からさまざまなことを推察して、ニーズ(必要)やデマンド(希望、意欲)にマッチした生活や活動への参加を実現するために環境設定をする、支援を提供していくことになります。

ICFによる自立支援とは、障がいを補うバリアフリーや個人的原因に終始する医療発想から、生活機能を整えることへの転換でしょうか。

中教審の特別支援教育専門部会に提出された資料にあるケースで見てみましょう。

仮想事例A君の場合
・ 中2 男子。
・ 内向的な性格である
・ 脳性麻痺という診断を受けており、下肢に運動麻痺がある。
・ 移動は、クラッチでの歩行及び車いすの使用である。
・ 住民の転出入があまりない、比較的保守的な地域に3世代家族で住んでいる。
・ もっとも近いスーパーは、家から50メートル程の距離のなだらかな坂を上った所にある。
・ スーパーに買い物に行きたいが、心理的な抵抗があり、行けない。

従来の分類ですと、「脳性マヒで下肢に機能障がいがるため移動が困難。その結果、一人で買い物に行けない」となります。支援を考えると、スーパーまでの動線でバリアフリーを確保するとか、介助者を付けるとなるでしょうか。

これをICFで考えてみましょう。
上記に加えて、「上り坂がある」「車椅子の性能が低い」「近所の目を気にする祖父母」(以上、環境因子)、「内向的な性格」(個人因子)といった背景因子についても検討されます。

この分類結果から一人で買い物へ行くための自立支援策を考えると
・下肢運動マヒの軽減(PT理学療法士)
・家族・近所の人たちの支援的な態度(保健師)
・省力で自操できる車椅子(自治体福祉課、PT)
といったことも必要になってきます。

あやめさんの投稿からひきますと、平等な福祉から公平な生活支援への転換でしょうか。これまで特別支援学級(旧 養護学級)では個々の教師の経験則を頼りに教育や自立支援プログラムが実施されていましたが、このICFが普及することで経験の浅い教師でも子どものアセスメントと支援提供を適切に行うことができるようになるでしょう。期待です。

ICFについては年末から勉強をはじめたばかりで、理解の怪しい部分があるかも知れません。お詳しい方、おいででしたら、ぜひご指摘下さい。