伊藤美登里さんがその著書の中で紹介している、U.Beckの
「市民労働」を読みました。とても興味深かったので、これから5回に
分けてその内容の簡単な紹介と、感想などを書いてみます。
※詳細は『市民社会と批判的公共性』
(佐藤慶幸ほか編著/文真堂/2003)のなかの第三章
「U.ベックの市民労働」をご覧下さい。
■市民労働?
◇市民労働の定義◇
市民労働とは聞きなれない言葉ですが、いったい何のことでしょうか。
市民労働の説明として、以下のように定義されています。
・「公的労働」であり「民主主義を実行すること」であり
「創造的不服従、そして自発的社会参加」である。
・市民労働は、職業労働や強制的ソーシャル・ケースワーク、
そして家庭での労働や余暇活動などからも区別されうる。1※
・合理的経済的目的ないし自給自訴経済的目的に役立つわけではない。
・市民労働は政治的行為と親和性があり、集合財を生産し、
「公共の福祉」に役立つものである。2※
・市民労働は「自発的」な「自己組織された」労働である。
1※職業労働は基本的に統制権が雇用者の側にありますが、市民労働は
基本的に外部による操作を受けず、あらゆる主導権は実際に活動に
従事する人たちにあります。
ただし、市民労働は職業労働にとって代わるのではなく、後者を前提
とし、後者を補完する、としています。
ある者は職業労働、ある者は市民労働、という分業ではなく、一人の
人間がどの労働にも関われるようなイメージです。
2※その解決が地域の発展に資するような問題に取り組む点において
市民労働は公共の福祉であるといえます。
また、このように説明される市民労働に参加する可能性が高い社会集団
として、失業者・主婦・年金生活者・青少年・パートタイム労働者など
が挙げられています。
(つづく。記:しばやま)