ワーク・ライフ・バランスと女性とコミュニティビジネス

■ある女性にとってのワーク・ライフ・バランス

都内で助け合い活動を行なうあるNPOで活動会員に話を聞きました。ここでは仮にAさんとします。Aさんは3人の子どもを抱える女性で、最初の出産以降は専業主婦として仕事を持たず、PTA活動などを行なってきました。利用者として子どもの送迎などのサービスを利用している立場でしたが、現在は自身も活動会員として家事支援や子育て支援の活動に参加しています。PTA活動や家庭の支障にならない程度の活動と言うものの、週3日の日中で6〜7軒の利用者宅を訪問するというハードなスケジュールをこなしています。PTAの予定が入ったときは、日程をやりくりします。

収入は目的でないとAさんはキッパリ言います。ちょっとした助けがお年寄りや小さな子ども抱えるお母さんにとってどれほど有り難いものなのか経験で分かっているからこそ、この仕事をしているのだと話します。子どもの同級生の母親仲間から聞くスーパーのパート仕事は、人間関係も複雑そうで仕事の内容にも興味はありません。助け合い活動は、基本的に利用者と1対1の付き合いになります。その人と信頼関係を築くことが仕事へのモチベーションにもつながるようです。到着時間を待ちわび玄関先で待つ方、本当に感謝してくれる方と接することで、Aさんはこの仕事が人を支える仕事だと実感するそうです。Aさんのお宅では通常の生活費を夫の給与で賄っているため、自分の収入は全て好きなように使うことができます。ケーキやドーナツなど子どもが喜ぶおやつを買うことが多くなったそうです。また、自分の洋服に使ったり、子どもが選んだ好きな本をそれぞれに購入してあげることもあります。

取材の中で、印象的なお話がありました。家族を前に夫がふと「仕事をしているのはパパだけ」と言った時、一人のお子さんが「ママだって仕事しているよ」と言ったそうです。Aさんもそれまで意識していませんでしたが、子どもはちゃんと見ているのだと実感したそうです。自分の財布を持ち、社会的意義のある仕事をしていると家族から認められることは、おそらく多くの女性にとって自己価値を高め、主体的に自分の人生に関わっている実感を与えてくれるのではないでしょうか。

つづく・・・
(会報「万里夢」2007.07.01特集より)