私が小鳥になれるとき<パレスチナの少女モナの詩> 9.18 緊急特別企画 in 新宿御苑

◆私が小鳥になれるとき◆
モナ・ザールーラ (12才) シャティーラ・キャンプ

今よりもっと小さかった頃、自分が小さな小鳥になって、
行きたいと思ったところはどこにでも、自由にとんでいけたら、
私はそんな空想ばかりしていた。

鏡の前で、小さな小鳥のふりをして、さえずりをまねたりもした。
羽の形に紙を切り、小鳥をまねて化粧をし、
空を飛ぼうとベッドに立ってみたりもした。

そんな私におじいさんはいつも、こう話し掛けてきた。
自分は大地に根をはった、木みたいなものだったんだよと。

「どうして、大地に根付いた木かというとね、
人間にとって、大地こそ全てだからなんだよ。
だれも、大地無しでは生きていかれない、人間ならね。
ほんとにそうなんだ、私は木のようだったんだよ、
パレスチナにいたころはね。」

そう言われて、小さな私はこんな風に応えた。
「でも、私は鳥になりたいの。
そしたら、おじいさんの肩の上にもとまれるわ。」

するとおじいさんは、大声でこう返したものだった。
「あっちにおいき。お前は私の枝を折りたいのかい?
お前は小鳥なんかじゃないんだよ。」

おじいさんが亡くなってからも、私はずっと小鳥に憧れていた。

成長するにつれて、私はだんだん理解するようになった。
私は決して小鳥にはなれない、だって私はパレスチナ難民だから。

パレスチナ難民であるということ、それはこういうことなのだ。

いつまで待っても、私が空を飛べるようになる日など、やって来やしない、
自分が根づける、そんな大地ももたないように、
私が私でいられる、そんなアイデンティティすら持ちえないように、
私が空を飛べる、そんな日は決して私にはやって来やしない。

私はやっとわかるようになってきた、
自分が根付くことができる、そう信じられる大地をもつことが、
人間にとって、どんなに大切なことなのかを。

なのに、私の大地はずっとむこう、
私は、あの地に戻りたい、パレスチナに戻りたい。

私は、あの地に戻りたい、
私は、私のアイデンティティを手に入れたい、
おじいさんがパレスチナを離れる前に、しっかりその手に持っていたものを、
私もこの手に掴みたい。
私は、あの地に戻りたい、
私は、私が何になるのか、私自身で選びたい、
その自由を得るために、私はあの地に戻りたい、

ずっと憧れていた小鳥になりたい、
それがむりなら、木になりたい、
いつもいつもおじいさんが、私になれと望んでくれた、
自分の大地にしっかり根付いた、そんな木に私はなりたい。
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翻訳:遠藤ひろえ

提供:パレスチナの平和を考える会
http://www.palestine-forum.org/
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うづです。

2日連続ですが、来週月曜18日(祝)に上映する
映画「夢と恐怖のはざまで」に登場するモナの言葉を紹介しました。

パレスチナに生きる子どもたちをテーマとした、
この緊急特別企画に、ぜひお越し下さい!