きららの森 造形クラス12月

《低学年 造形クラス》
低学年クラスでは、9月から12月に渡る4回シリーズで、『お釈迦様』の話を基に、絵を描いてきました。このお話の中には、物や力では計ることのできない大切な英知が込められています。それは人生を歩んでいく中で、私たちに進む道を照らしてくれる大切なもの。そういったものが、授業を準備している私の中でもじんわりと感じられてきます。
 私の家に眠っていた一冊の児童書は、40年以上も前のもので、ページはすでに黄ばんでいました。それが今回子供たちにお話する基となったお釈迦様の本です。不思議なもので、説明的で理論的な大人の本を読んでいるときとは異なった体験で、それは頭で受け止めているのではなく、もっと体の異なったところで感じている体験です。言葉数は少ないのに、じんわりとした深いものが言葉の間に漂っていると言えばよいのでしょうか。子供たちはきっとこういったものを受け止めているのでしょう。何を学んだの?と尋ねてみても、言葉では言えないけれど、お話の英知は心に染み入り、奥深くへと消えていく…。
 画用紙に広げていく様々な色は、縮んでいくようだったり、広がっていくようだったり、暖かそうだったり、冷たそうだったり…。それはまるで私たちの心のありようそのものでもあります。絵画活動は、お話の英知が子供たちの心にじんわりしみこむその過程を手助けしてくれています。
 授業の始まりのときは子供たちは賑やかで、まちまちに存在していますが、お話のときとなると、皆は小さな輪になって、心も収縮していきます。手も口も休憩に入り、耳をしっかり使っています。でも、にじみ絵になると、お話のときのちょっとした緊張感が、ここではゆったりとした開放感へと変わり、子供たちは小さな画用紙の上で楽しく漂っています。 
細井 信宏