《中高学年造形クラス》
このクラスでは、昨年12月から4回シリーズで『平和』をテーマにした造形活動を行っています。1回目は捕虜収容所の過酷な環境の中で実際に起きたと言われるお話『キャンドル』を子供達に聞かせ、人々に希望を与えた一本のろうそくを描きました。2回目は、イラク戦争に反対する人々が世界中で平和行進を行った話、3回目は、アフリカでの戦争で難民になった子供達に食糧を送る活動についてお話しました。
イラク戦争が始まろうとしていた2003年の冬、世界の多くの都市で同じ日に平和行進は行われました。それは歴史に残るほどの大規模なもので、例えばロンドンでは200万人もの人々が集結しました。そこに私も参加していたのですが、その巨大な人間の列はまるで大龍のようで、うねりながらゆっくりと都市の中心部を横断していきました。
アフリカでは1994年にルワンダで内戦が起き、多くの人々が難民となって国外へ避難しました。その後しばらくしてNGOのスタッフとして、私は難民キャンプに向かうことになりました。その難民キャンプの子供達に食糧が届くまでの過程を、当時の写真を交えながらお話しました。そこではいろんな国から沢山の人々が、国連職員やNGOスタッフとして活動していました。
戦争の悲惨さ、そんな重い闇の世界を小学生に伝えるにはまだ早すぎますし、抵抗を感じます。ここで子供達に伝えたいことはそのようなことではなく、そのような場所に、世界から沢山の人たちが、平和を願い、それに向けて実行しようとしていること。その一人一人の小さな行動が大きな龍のごとく、未来への大きな力となる、ということです。その未来へつながる「情熱」を子供達に伝えたい。
4回目はお話の舞台を日本に移し、昔話『米良の上ウルシ』を子供達に聞かせました。お話の中で、自然の恵み(ウルシ)を自らの利益だけのために使い果たそうとする人間に、龍が現れてウルシを守ろうとします。昔から中国や日本などの地域では、龍は自然の恵みや神々と深い関係のある大切な存在として考えられてきました。森を伐採し消費するだけでなく、植林し、育ててきた昔の日本人の心の中には、きっとこの龍の存在が深く浸透していたのかもしれません。海外の森を伐採し、自分達の森を見捨ててしまった日本の現状に未来のテーマを投げかけつつ、大きな画用紙に一人一人がイメージする龍を描きました。
細井 信宏