《低学年クラス》
5月、6月はグリム童話から『いばら姫』『つぐみひげの王様』のお話をし、それをもとににじみ絵を行いました。9月は『聖フランシス』です。
立派なお屋敷に住むお金持ちの両親のもとに生まれた彼は、大きくなると家を出て旅に出ます。そこは今まで自分が見てきた世界とは異なり、ものや食べ物、家を持たない人たちに出会うこととなります。フランシスは持っていたものを分け与えていくうち、ついに何もなくなってしまいます。夕日が沈もうとする頃、広い草原にやってきた彼は、寂しさと不安に襲われます。でも、木の枝や草陰で楽しそうに歌っている鳥たちに気づくと、草原の中へとはいって行き、「今日は」とあいさつしたとき、鳥たちの歌声が一斉に止んだかと思うと、バタバタ、とフランシス目掛けて飛んできて、彼を取り囲んでしまいます。そして次に何を話してくれるのかと、鳥たちは長い首を振りながら待っています・・・。何と、フランシスは鳥たちとお話ができるようになっていたのです。
制作では、お話に表れてくる心の様を、色の体験として子供たちに伝えることを大切にしています。『暖かい夕陽に染まった空が、暗い夜の静けさで覆われていきます。それとともにフランシスの心は、何もなくなってしまってこれからどうすればいいんだろう、何もない草原でどうして夜を過ごせばいいんだろう、という不安と寂しさに包まれていきます。でもそこに甲高く楽しそうに歌う、黄色いオーラをまとった鳥たちが、彼の冷えた心を温め、彼は元気になっていきます。』
細井 信宏