《低学年クラス》
低学年では、秋から冬にかけて『聖フランシス』のお話を4回シリ−ズで行ってきました。それは、旅に出た青年期から、自分の使命を見出し、病人や貧しい人々のために働いた中年期、そして肉体が衰えてこの世を去っていく老年期という流れに沿ったものでした。12月の造形クラスは、その最後のシ−ンをお話しましたが、そこには、老いというものに肉体的には敗北していきながらも、精神的に満たされた、美しい老人の姿が描かれています。視力が衰え、耳が聞こえなくなり、体も自由が利かない彼は、森の中にたたずむ小屋の前に座り込んだまま、じっと周りに意識を向けています。彼は両手を広げ、空高くに輝く太陽、頬をなでるそよ風、花の香り、涼しい影を運ぶ雲、木々や小川、生き物たちのささやきを、まるで自分の兄弟姉妹のようにひたすら感じ取っている、そんな姿です。それは、老いを背負い、視力を失い、暗闇の中に立たされているという不安を克服した、真実を見据える人間の姿、世界と一つになろうとしている、開かれた姿を感じさせます。と、こんなことを子供たちに理解させるのはまだ無理な話ですが、体が衰えて大変なのに、あらゆるものとお友達になって、幸せな笑顔を放っているおじいさんの姿はとても力強く、印象的なものだと思います。水彩では、画用紙の周りにフランシスのいろんなお友達、兄弟姉妹を置いていきました。「青はどんなお友達?」「青い空!」「海!」「黄色は?」「お日様!」「お花畑!」・・・。色同士が混ざり、新たな色が現われると、その色からまた新たなお友達を想像していきます。色からいろんなお友達が現われてきます。そんな世界のお友達に囲まれて、年老いたフランシスは杖を持って真ん中で立っています。
細井信宏