『日本語分からず子育て不安』3月2日 東京新聞

『日本語分からず子育て不安』
通訳や翻訳 外国人ら支援
 小学校の入学手続きの通訳や防災マップの翻訳を−。日本語が苦手な外国人の区民が子育てをしやすい環境にしようと川崎市川崎区の「子ども支援通訳・翻訳バンク」事業がスタートした。学校や幼稚園、児童相談所など子育て機関の要請を受けて通訳や翻訳を請け負う。支えるのは「かつて私も同じ苦労をした」という悩みを共有する外国人ボランティアらだ。 (内田淳二)

 通訳バンクを支える一人、ローズマリー・サルビオさん(40)はフィリピン出身。タガログ語と英語の通訳を担当している。「私も約十年前に来日した時は言葉が分からず、不安でいっぱいだった。同じ経験をした者として少しでも役に立てれば」と、ボランティアに参加した思いを語る。

 「日常会話ができるようになっても、言葉の壁はあった」と、自身の子育て時期を振り返るローズマリーさんは「学校の入学手続きや、市役所での申請など複雑なものは理解しづらい。『授業参観』も最初は意味が分からなかった」と苦笑いする。

 同バンクは、多文化共生事業に取り組む「青丘社・市ふれあい館」が受託し、昨年十二月から運営を始めた。同区には市内で最多の約一万人の外国人が住んでいるが、これまでサービスを受けるためには、中原区の市国際交流協会などに依頼するしかなかった。

 同バンクには、ローズマリーさんら在住外国人や日本人ら通訳・翻訳ができるボランティア約二十人が現在、人材登録している。対応できる言語は、ハングル(韓国・朝鮮)語、中国語、タガログ語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語、英語。利用は個人の申し込みではなく、学校や児童相談所、子育て支援センターなど子育て機関が必要に応じてバンクに依頼する。利用は無料。

 同館は「複雑な言葉だけが難しいのではなく、母国では中学校に当たる学校がなかったり、運動会や遠足などの行事が行われなかったりするケースもある」と述べ、「習慣の違いがコミュニケーション不足を生むことも多い」と通訳の重要性を強調。通訳・翻訳に当たっては、直訳だけではなく、その背景を含めた意味を添えて簡単な言葉に置き換えるなど、理解を図るようにしているという。

 同バンクは始まったばかりで、まだ利用は少ない。同館は各機関に活用を呼び掛けるとともに、「今後は、運動会などのお知らせものなどで、すぐ翻訳の手伝いができるようにしたい」としている。

 その上で迅速な対応を図るため、通訳・翻訳ボランティアの一層の充実も目指しており、同館は「スキルアップは後でできるので、『通訳は難しそう』と考えずにボランティアに応募してほしい」と呼び掛けている。

 問い合わせや、ボランティアへの応募は青丘社=(電)(288)2997=へ。