全国の公立の小・中・高校で、日本語が十分に使えない外国人の児童・生徒が増えている。文部科学省によると、その数は全国の885自治体で約2万人。
指導教諭 大幅に不足
同省は指導方法の手引を作成するなど対策に取り組んでいるが、学校現場では日本語指導に不慣れな先生も多く、専門家は「外国人の子供に日本語を教える専門の先生を養成する必要がある」と指摘している。
人口約4万2000人のうち約6800人が外国人の群馬県大泉町。町立小中学校7校の児童・生徒の1割が外国人で、通常の授業とは別に日本語の力を付けるための「日本語学級」というクラスが全校にある。
しかし、教えるのは、日本語指導が専門ではない一般の先生だ。町教委の担当者は「ポルトガル語やスペイン語を話せる人を町の予算で雇ってサポートしてもらっているが、指導が行き届いているとは言えない」と打ち明ける。
東京・歌舞伎町に近い新宿区立大久保小学校では、韓国、中国、フィリピンなど外国人の児童が、全校児童(約180人)の半数を超える。長岡富美子校長は「日本語で日常会話が出来るようになっても、学習活動ができるまでの日本語能力を付けるのには時間がかかる」と話す。
文科省によると、日本語指導が必要な外国人の児童・生徒数は、1991年は5463人だったが、93年には1万人を超えた。2005年は2万692人で、全外国人児童・生徒の約3割を占める。母国語別の内訳は、ポルトガル語約37%、中国語約22%、スペイン語約15%の順に多い。
背景には、90年の出入国管理法改正で、日系人については、それまで認められていなかった単純労働が可能になり、主に南米からの入国者が急増したことがある。ただ、日本語が十分使えないことで、子供が学校に来なくなったり、卒業しても定職に就けなかったりする問題点が指摘されていた。
このため、文科省は、教科内容を教えながら日本語指導をする際の注意点をまとめ、03年に小学生用、今年3月には中学生用の指導手引を作成。例えば、中学の国語の授業ではなぞなぞやしりとりをして日本語の単語の数を増やすことや、知らなかった言葉を集めて辞書を作ることなどをアドバイスしている。
しかし、日本語指導の担当教師を置いている自治体は70にすぎないなど、指導体制は不十分なのが現状。文科省では、一般の先生が日本語を指導できるよう、研修体制の充実を図る方針だが、早稲田大大学院の川上郁雄教授(日本語教育)は「米国やオーストラリアには英語を話せない子供に英語を教える先生を養成するシステムがある。日本でも、こうしたシステムを導入し、外国人の子供に日本語を教える専門の先生を必要な学校に配置すべきだ」と訴えている。
(2007年5月21日 読売新聞)