「言葉超え助け合い 被災外国人や留学生 中越沖地震」(朝日新聞7月28日)

2007年07月28日13時32分

 新潟県中越沖地震では多くの外国人も被災した。避難所に避難していた外国人は、被害の大きかった柏崎市を中心に最大時で約120人。慣れない体験におびえ、言葉の壁から情報過疎になり、混乱する人たちがいた。一方、地域住民の一人として、助け合いの輪に加わる外国人も少なくない。「困ったときに国籍や宗教は関係ない」という。

ボランティアの相談員が住まいや避難所をまわり、外国人被災者の相談に乗っている=柏崎市西港町の新潟産業大の留学生寮で
 「ニーハオ。何か困っていることはありませんか」

 柏崎市西港町にある新潟産業大の留学生寮。ブルネイ出身のボランティア相談員、須田麗子さん(44)が20日夜、10人ほどの中国人留学生に中国語で話しかけると、彼女らの表情がみるみる明るくなった。「水が出なくて料理ができない」。せきを切ったように話し始めた。

 須田さんは地震直後から現地に入り、外国人のいる避難所や留学生寮などに毎日巡回を続けた。

 一方、支援を受けたくても受けられない人もいる。市内に住むフィリピン国籍の女性(32)は偽装結婚で入国し、スナックで働いていた。「水や食料が欲しいが、怖くてもらいにいけない」

 柏崎市によると、27日時点で、計35人の外国人が市内の6避難所に身を寄せている。大半は中国人だが、フィリピンやフランスから来た人もいる。留学生に加え、日本人と結婚して飲食店などに勤める人が多い。

 こうしたなか、新潟県は28日まで、外国人向けに電話とメールによる相談窓口を設置。英語、中国語、ロシア語、朝鮮語で対応した。避難所や自宅への相談員の派遣は29日以降も必要があれば行う。

 支援する側に回った外国人もいる。避難所となった柏崎市宮場町の「枇杷島コミュニティセンター」では、新潟産業大の留学生寮に住むモンゴル人留学生が活躍した。近くの小学校プールから、自ら買って出た約10人の留学生がバケツで仮設トイレ用の水を運んだ。町内会長の植木文雄さん(71)は「地震に慣れていない留学生が、怖がりながらも運んでくれた。懸命な姿に感動した」。

 同寮のリーダーで、大学院1年のスチントウさん(27)は「困ったときはお互いに助け合っていくことが大切。いつもお世話になっている日本人の皆さんから『ありがとう』と言われてうれしい」。

 また、新潟、富山両県に住むイスラム教徒の男性7人が21日、同市役所を訪れ、義援金20万7000円を寄付した。市によると、外国人からの義援金は初めてだったという。

 県内のモスクに所属するパキスタン人とバングラデシュ人らがイスラム教徒に呼びかけて集めたといい、富山県射水市のMD・ヒラ・ダイヤモンドさん(37)は「テレビで被災者の様子を見て、少しでも励ましたいと思った」と話していた。