「外国人労働者報告義務付け、周知進まず 差別の恐れも」(神戸新聞10月1日)
厚生労働省が作成した外国人労働者の雇用報告について知らせるリーフレット=神戸市中央区、兵庫労働局 外国人労働者の雇用状況の報告を事業所に義務付ける改正雇用対策法が10月1日から施行される。外国人の就労支援や不法就労の抑止が目的だが、事業所への周知は進んでいない。兵庫労働局はリーフレットを経済団体に配るなど周知に懸命だが、新たな外国人差別などを招く恐れも指摘されている。(高田康夫)
これまで外国人を雇用する一定規模以上の事業所は毎年六月、在留資格や国籍、職種別の外国人数について、任意で職業安定所に報告してきた。同労働局によると、県内では従業員三十人規模以上の約九百十事業所で、約五千人が対象だった。
改正で、特別永住など一部の在留資格をのぞいた外国人を雇用する全事業所が対象となり、氏名と在留資格・期限、住所、生年月日などを、職業安定所に届けることが義務化された。留学生のアルバイトも含め、すでに外国人を雇用している企業は一年以内に報告しなければならない。報告を怠ったり偽ったりした事業主には三十万円以下の罰金が科せられる。
外国人の労働実態が把握でき、職場環境の改善や再就職支援に役立てられるほか、事業主に在留資格を確認させることで、不法就労の抑止が期待されるという。
神戸市長田区では、約五百人のベトナム人が居住し、多くが地元のケミカル工場で働く。日本ケミカルシューズ工業組合は法律の改正を会報で会員企業に知らせたが、「どこで何人働いているか調査しておらず、影響も分からない」。ケミカル工場の経営者(42)は「不法就労をなくすのはいいが、その前に外国人の単純労働を認めてもらわないと、人手不足でやっていけない」。
周辺では不法滞在のベトナム人が摘発されることもあるといい、「働けなくなった外国人が余計に犯罪に走るのではないか」と心配する。
また、厚労省が取得した情報は法務省に提供する仕組みで、日本弁護士連合会などは「外国人のプライバシー権などを侵害する」と批判。「人種、皮膚の色、民族的・種族的出身を理由とした差別的取り扱いがもたらされる恐れがある」と指摘している。
雇用対策法 労働者の就労の安定と経済的、社会的地位の向上などを目的に、女性や高齢者、障害者などの施策の充実を定めた。10月から募集・採用時の年齢制限の原則禁止なども盛り込まれた。
外国人労働者は、「安い労働力」として酷使されていることが問題になり、雇用状況の報告が義務付けられた。