外国人研修制度むしばむ不正仲介 零細企業が丸投げ(朝日新聞9月1日)

人材を育て国際貢献を進める目的の外国人研修・技能実習制度をめぐり、開発途上国の人材送り出し機関と日本企業側との間に入り、不正な報酬を得る仲介業者が横行している。仲介業者に報酬を払うため、研修・実習生の手当や賃金がピンハネされるなどトラブルの原因にもなっている。受け入れノウハウが乏しい中小零細企業で目立ち、調査をしている市民団体は少なくとも100を超える仲介業者が活動していると指摘している。

 仲介業者は、本来の1次受け入れ機関である協同組合などと別に存在することから、「ゼロ組合」や「コーディネート機関」と呼ばれている。

 関係者によると、アジア諸国に人脈を持つ国内の人材派遣業者や日本在住の外国人などがこうした仲介業務をしている。人手不足で外国人受け入れを望む中小零細企業側が形式だけの協同組合を設け、仲介業者にあっせんや来日後の実務を丸投げするケースが多いという。

 各地の労働基準監督署や支援団体などによると、岐阜県では、05年ごろから昨年暮れまで、北陸地方の縫製関連企業が受け入れた中国人研修生らから1人につき月4千〜1万円前後を徴収し、仲介業務を代行した業者に払っていた。業者が管理していた研修生らは多い月で1500人にのぼったという。愛知では中小の機械メーカーなどが数年前から、業者の仲介で100人前後のベトナム人を受け入れ、研修生ら1人につき月1万円前後を報酬として業者に払っていた。

 市民団体「外国人研修生権利ネットワーク・福井」の高原一郎事務局長は「仲介業者は地域や業種の細かなニーズに応えているケースが多い。少なくとも全国で100を超える」と指摘する。

 06年に来日した研修生は約9万3千人で、その約7割が中小零細企業がつくる協同組合などの団体が受け入れ窓口となっている。

 外国人研修・技能実習制度は営利目的の仲介業者を想定してこなかったため、昨年12月に法務省指針が改訂され「営利目的で介在する機関があることは、国際貢献を目的とした制度の趣旨に反する」と明記。違反企業には3年間、新規の研修生の受け入れを認めていない。

 法務省入国管理局によると、研修・実習生の受け入れ企業・団体の不正行為は昨年は過去最多の449機関、562件にのぼり、賃金の不払いなど労働関係法規違反が178件で最も多い。(能登智彦、小幡淳一)

http://www.asahi.com/national/update/0830/OSK200808300106.html