多文化の卒業生に聞く 〜満岡建一くん〜 <後編>

先月と今月は、多文化共生センター東京(以下「多文化」と表記します)の
子どもプロジェクトの第1期卒業生で、去年大学を卒業した満岡 建一くん
にお話を伺います。(聞き手は栗林さんです。記録係は杉田です。)

先月のインタビュー
https://www.voluntary.jp/weblog/myblog/254/1931740#1931740

——就職先はどういう会社に決まったんですか?

「海とは関係のない仕事で、技術(電気)の仕事です。
内定をもらった僕ら新人と採用担当の人事の人たちで飲み会があって、
そこでいろいろ聞いたんですけど、すごく忙しい会社で
『土曜日も仕事かもしれない』と言われました。
だから、仕事が始まったら『多文化』に来れなくなるかもしれませんね。
勤務地はたぶん東京だと思いますけど。」

※このインタビューは2009年2月に行いました。

——どうでした?『多文化』に戻ってみて。

「広くなりましたね。
でも、最初に三河島に来た時は、田中さんしかいなくて。
せっかく来たのに遠足でみんないなかったんですよ。
だから、その次の週から教えに来ました。」

——教えてみてどうでしたか?

「中国から来た女の子を教えていて、楽しくしゃべりながら出来ましたが、
『難しいなあ』と思いましたよ。」

——自分の時を思い出しますか?

「自分も日本に来てから日本語を勉強する場所に通っていたので、
それを思い出しながらやっている感じですね。」

——半年やってみて、何か気づいたことはありますか?

「最初にボランティアとして来た時よりは、他のボランティアの人と
話すようになって、いろんな年齢層の人と話して勉強になるなあ、
と思います。小学生や中学生と話す機会もなかなかないですし。」

——自分が勉強していた時と比べて、『多文化』はどう変わりましたか?

「本格的に勉強しているという感じですね。
昔は遊びながら下の広い部屋で勉強をして、上の事務所でお茶をしてました。
今では生徒がボランティアとお茶したりはしないですよね。」

——日本語を教える時に気をつけてることはありますか?

「特に気をつけてることはないですね。
ひらがな、カタカナはカードで教えることが多いですから。
ただ、中国語を話せる人が少ないから、僕が日本の文化を教えているというか、
『日本人と仲良くなるためには、日本の文化を大事にしないといけない』
という話はよくします。」

——文化というのは?

「たとえば、日本人はお正月に何を食べるとか、僕が日本に来て知らなくて
失敗した話などです。ちょっとここでは言えないですけど(笑)
最近では、中国のドラマを見ると中国人はみんな上司に敬語じゃないから、
僕が日本に慣れ過ぎちゃってるのか、逆に『上司に敬語を使わない』ことが
変な感じがしますね。
あと、中国の親戚のおばさんちで料理をみんな自分の箸で取って
食べることは、昔は当たり前だったのに、今は『知らない人と同じ皿で
食べるのはやだなあ』と思うようになりました。
それに中国では小学校の卒業式でスーツみたいな服は着ないんですよ。
みんな私服というか普通の格好です。
あとは、日本の遠足ではみんな水筒にお茶を入れて持って行くでしょう?
中国ではジュースとかペットボトルを持っていくのが当たり前で、
僕は知らなくて1人だけ遠足にジュースを持って行ったこともあります。
そういうのを含めて『日本の文化』だと思うんです。」

——先生とかはどうですか?

「中国の先生は殴ったりするから嫌いです。日本の先生はとても優しいです。
中国では、椅子に座って、手を後ろに組んで先生の話を聞かないと
いけないんです。だから、あんまりノートを取らないですね。
それに、授業中日本人の生徒は手を上げないでしょう?
中国では生徒みんなが手を上げるんです。
先生に自分が優秀だとアピールしたいんだと思います。
でも、もし日本でそれをやると浮くじゃないですか。
いじめられそうだから僕は日本であまり手を挙げたりしませんでしたが。
そういうのを知らないと学校でうまくやっていけないんです。」

——日本人とうまくやるのは大変じゃなかったですか?

「僕は親と離れて1人でしたし、寮にも外国人はだれもいなくて、
『うまくやっていかないといじめられる』というのがありましたから。
中国ではよく日本の戦争の話を聞かされて、昔みんな日本が嫌いだから、
逆に中国人が日本に来たらいじめられるんじゃないかと思ったけど、
それは大丈夫でしたね。」

——日本人とうまくやっていくコツはありますか?

「テレビの話題とか、日本人の会話に付いていくために大事です。
日本人と会話をするには、日本の文化を知らないといけないから、
日本のテレビや日本のお笑いブームについて知ることが大事だし、
マックやサイゼ(=サイゼリヤ)など、みんなが使う言葉を覚えて、
野球だったら巨人にどの選手がいるかとか、基本的なことを
常にアンテナを張って知ることが大事だと思います。
最初はみんなさびしいし、うまくやっていけるかどうか分からなくて
不安だけど、やっぱり友達はいたほうがいいですから。」