多文化の卒業生に聞く〜張 学鑫(ちょう がくしん)くん〜 <後編>

先月と今月は、『多文化(多文化共生センター東京)』の
子どもプロジェクトの卒業生で、現在大学2年生の
張(ちょう)がくしん くんにお話を伺います。(聞き手は杉田です。)
先月のインタビューはこちら

——大学ではどんな勉強をしていますか?

「情報科学部情報工学科に在籍しています。
プログラミングが中心で、将来的にプログラマーになるための
カリキュラムですね。
プログラミングは英語なんですが、じつは英語と数学が苦手です。(笑)
工業高校のときにプログラムの基礎を勉強していたので、なんとか大学でも
ついていけます。高い評価(S)はあんまり取れないですけど。
中学生の頃からパソコンに興味があり、できたらパソコン関係の方向に
進みたいと思っていました。
高校では4コマまんがを動かして動画みたいなアニメを作るプログラムを
組むのが楽しくて、大学にいったら、もっと複雑でおもしろいプログラムが
作れそうだと思ったので、この大学を選びました。
高校の担任の先生にも勧められたので。」

——中学校と高校と大学生活の中で、どれが一番楽しいですか?

「一番は高校です。
中学校では日本語がしゃべれなくて、したいこともできなかったので、
高校では、中学校でやれなかったことは全部やりつくそうと思っていました。
クラスでは文化祭の実行委員もやっていました。
高1ではやってなかったですが、高2と高3ではクラスメートと一緒に
文化祭を盛り上げました、高2の時は文化祭で屋台をやり、
校内の投票で銀賞を取りましたよ。(ちょっとした自慢かな(笑))
また、中学校ではあまり友達ができなかったので、高校では積極的に友達を
作ろうと思っていて、今でも連絡を取り合うような友達ができました。
彼らは別の大学に行ったり、仕事をしたりしていますが、メールで連絡を
取り合って、たまに会っています。
卒業してから、高校(母校)の文化祭に行ったりしました。
高校の勉強はそんなに難しくなかったです。宿題も学校で終わらせていました。」

——高校の部活はどうでしたか?

「部活は、バドミントン部(週2)と写真部(週1)に入っていました。
写真部では、写真を自分の空いている時間に暗室を使って現像することが
できるのが魅力でした。
顧問の先生が20年ぐらいカメラを使っていて、鉄道マニアだったんです(笑)。
江ノ島、京島百花園、矢切の渡し、柴又、上野動物園など、いろいろな
ところに部員全員で撮影会をしに行きました。
撮影した後みんなが集めて撮影した写真について品評会を開いて、
お互い語り合っていました。ちょっとした変な連中かも?
自分が撮った写真が白黒だけで500枚くらい、カラーもたくさんあります。
保護シートに入れて、今も保存していますよ。」

——国際交流協会のボランティアをしているそうですが、きっかけは
何ですか?

「中3のときに荒川区主催の日本語スピーチコンテストに出ることになって、
賞は取れなかったですけど、がんばったので満足でした。
そのことがあって、高3のとき、大学入試が終わった後に荒川区の人から
外国人向けの日本語スピーチコンテストの司会を頼まれたんです。
意外と人がいたので緊張しました。全部で50人ぐらい来ていました。
スピーチをする人が初級、中級、上級に各5人ずつで、あとは日本語学校の
人とか審査員(荒川区の有名人)が来ていました。
司会は男女2人でやって、おもしろかったです。
スピーチに対して感想を言ったり、結果発表でみんなをドキドキさせて
みたりしました。
それがきっかけで、荒川区の国際交流協会の会員になって、
今もボランティアをやっています。」

——どんなボランティア活動をしているんですか?

「荒川区のお祭りとかイベントの時に、運営をやっています。
区役所の職員は5人ぐらい参加しているだけで、多くの会員が支えている
感じです。
年に1回『川の手荒川まつり』というイベントがあって、民族衣装を
日本人に着てもらって写真を撮るというコーナーを担当したことがあります。
そのときは写真部だったのでカメラマンをやりました。
毎年あるコーナーで、撮って、写真をすぐプリントアウトして渡すという感じです。
衣装集めが大変で、民族衣装は区役所が持っているのもあるんですが、
会員が持っているものは毎年集めないといけないんです。」

——ボランティア活動をやってみてどうですか?

「ボランティアが好きというわけではないですが、面白そうだからやって
います。
今年も4月に『川の手荒川まつり』をやりましたし、
あとは、スピーチコンテストの手伝いや防災訓練や盆踊りにも参加しました。
区役所主催のイベントですが、防災訓練や盆踊りには『多文化』の生徒たちも
たくさん来てくれましたよ。」

——『多文化』でもボランティア活動をやっていますか?

「大学に入ってバイトとかもあって時間がなくなってきたんですが、
『多文化』では進路ガイダンスの案内やビデオ撮影を手伝っています。
あと、通訳もやってみたいんですが、早い日本語を訳するのは難しそうです。
生徒として『多文化』でやってきた分、自分の方が先生よりうまく
伝えられそうな気もするんですけど、自信がないですね。
仕事を頼まれると、『やらなきゃな』と思うし、責任感も感じますから、
頑張ってこなそうとしますし、頼まれた以上は期待を裏切ってはいけないな
と思うから、しっかりこなしますが、本当は僕は公の場にはあまり行きたく
なくて、自分からはやろうとしないタイプなんです。」

——『多文化』の良いところはどういうところでしょう?

「僕は『多文化』に来ると日本では数少ない自分の居場所だなということを
感じました。
始めて日本に来た子が集まって、気持ちを分かち合うことで、
お互いのことが分かり合える気がします。
日本に来て、同じ経験をした人だからこそ話が通じるし、
みんなが楽しくやっていけそうな雰囲気があります。
家にいるとだいたい一人だけど、みんながいるから楽しくて、
『多文化』に来ることでストレスが解消されるんです。
『多文化』の先生は友達みたいな感じでしたし。
いろんな話ができるので相談にも乗ってくれるし、ほっとします」

——大学の卒業後は何をしたいですか?

「授業が難しくなっているので、とりあえずの目標は卒業することです(笑)。
僕の学年では173人中38人留年しているんですよ!
卒業したら、できればプログラマーになるか、日中関係の貿易会社に入りたい
と思っています。
夢だけど通訳もなってみたいです。」