多文化のボランティアに聞く〜栗林和子さん〜

今回は、『多文化(多文化共生センター東京)』の
広報チームの栗林和子さんにお話を伺いました。(聞き手は杉田です。)

——『多文化』を知ったきっかけは何ですか?

「大学院(教育学部)1年の後期に、都内のエスニック社会(外国人社会)に
ついて調べてみようと思って、『教育』や『エスニック(外国人社会)』を
キーワードにしてインターネットで調べていたところ、『多文化』のサイトを
見つけました。
私の家から『多文化』の事務所までが近かったので、見学に行きました。
最初は飛び込みで話を聞きに来たんですが、毎月第2土曜日のボランティア講座
のことを教えてもらって、後日ボランティア講座に参加しました。
最初は子どもプロジェクトに参加しました。」

——『多文化』に入ってみてどうでしたか?

「身近な地域に外国からの方が住んでいることは数字として知っていたけれど
あまりイメージが沸かなかったのが、『多文化』に入って身近になりました。
また、ボランティアをやっていると『他の事よりもボランティアを優先しないと
いけない』というイメージがありましたが、『多文化』に入ってみて、
自分がすべての仕事をできるわけではないし、自分の今までやってきたことや、
自分のできることを生かして参加できるんだな、ということを感じました。
ボランティアって、すごく敷居が高いというか、参加するのが難しいという
イメージがあったんです。
でも、実際に多文化で参加されているみなさんは日常的には仕事をしていて、
本職がある中で自分のできる時間を見つけてボランティアとして参加されて
いることが、私にはとても新鮮でした。
そういった、いろんなバックグラウンドを持っている人たちが、自分の
持っているスキルを利用して参加できるというところがいいなと思いました。」

——昔から外国に興味があったんですか?

「はい。高校生のころは、青年海外協力隊や国際協力にも興味がありましたし、
今も海外に興味があり、たまに海外旅行にも行きます。
私はツアーの旅行より、地図を持って町を歩く方が好きです。
実際に歩くと、観光のパンフレットやガイドブックに載ってない人々の
暮らしが見えますから。
海外旅行は同じ大学の友達(今はみんな先生になっています)と行っていました
が、国内は一人で旅行することが多いです。
今年の夏も一人旅で夜行バスを使って大阪に行ってきました。
今回で3回目の大阪です。節約のためによく夜行バスを使っています。
おいしい食べ物や観光名所も回りましたが、今回は地図を見ながら歩き回って
みました。大阪の人はとてもフレンドリーですよ。
たまたまお寺の休憩所で、斜め前に座ったおばあさんが『どこから来たの』と
話しかけてくれて、いろいろと話をしていたら、『この後、一緒にコーヒーでも』
と言われて、喫茶店に行って、大阪の町について教えてくれたり、逆に、
おばあさんから見て東京のココが好きだ、という話を聞いたりしながら
一時間ぐらいお茶をしていました(笑)。
そのおばあさんは89歳で病気をしたことがないそうで、健康の秘訣は、
『よく食べることと、よく歩くことと、よく話すことだ』と言っていました。
私は、旅行に限らず都内でもよく歩きます。
これが趣味みたいなものですね(笑)。都内の地理はだいたい頭に入っている
ので、歩こうと思えば、吉祥寺からお台場まで歩けますよ。
実際に歩くことで、いろいろな面から町のことが分かるのが楽しいんです。
たとえば、六本木はきらびやかなイメージがありますけど、裏道に入ると
木造住宅があるし、寺も多いんですよ。」

——社会の先生として就職してみてどうですか?

「今年の4月に就職して、やっと学校にも慣れてきました。
教育実習も行っていたし、『多文化』でフリースクールの先生方から
中学校や高校の話を前から聞いていて、わりと『働くイメージ』を持てていた
ので違和感はないです。
ただ、土曜日も授業があって出勤しますし、日曜日もイベントがあることが
あるので、時間的な拘束時間は長いなと思います。
でも、授業の準備をしていると、『自分の好きなことをやっている』と
実感します。『分からない』と思ったことを調べるのが好きなんです。
自分の教科(地理と歴史)の中で、自分でも『どうしてこうなるんだろう』
とか疑問に思ったことを自分なりに調べてまとめて、生徒に伝えるのが
好きですね。たまに自分が調べてきたことに対して生徒が『そうなんだ』
『始めて知った』という表情をしてくれたりして、そういった反応があると
やりがいを感じます。
勤務先は中高一貫校なんですが、中学生も高校生も元気です。
騒ぐときもあるけど、こちらがちゃんと話すと生徒も聞いてくれますよ。
『多文化』の子どもプロジェクトでは、学校と違って1対1で勉強を見ますが、
言葉が違う分、丁寧に分かりやすく相手に伝わるように自分なりに考えて
いましたので、『多文化』の経験から、学校でも、分かりやすくイメージ
しやすく伝えることを心がけています。
また、就職してからは、学生の時と比べて時間がなかなか取れませんが、
学校帰りの時間や休みの土曜日などをうまく使って、『多文化』の活動に
参加したいと思います。基本的に土曜日は授業があり、子どもプロジェクトの
活動は難しいので、広報チームとして関わり続けていけたらな、と思います。」

——『多文化』に入って良かったことは何ですか?

「多文化に参加するまで、こんなにたくさんの子どもたちが外国から日本に来て、
進学面や勉強面で大変な思いをしているということを、情報としてもほとんど
知らなかったんです。自分自身、教職を取り、教育関係の勉強をしていた
はずなのに、国内の中でこういった外国からの子どもたちの教育課題がある
というのを知らなかったのが、自分にとって衝撃でした。
すぐに何かできるというわけではないのですが、『状況を知ること』という
のもすごく大切なことだと思うので、学校での自分の授業の中でも、自分の
生徒たちに向けて『多文化』の経験も生かして、こういう外国からの子どもたち
の状況を伝えていけたらいいなと思います。」