多文化のボランティアに聞く〜風間晃さんと中野真紀子さん〜<後編>

前回と今回は、『多文化(多文化共生センター東京)』のボランティアをして
いる風間晃さんと中野真紀子さんの対談を掲載します。
風間さんは主に子どもプロジェクトを中心に活動されています。中野さんは
子どもプロジェクト、親子日本語クラス、広報チームをかけもちしている
猛者です。(聞き手は杉田です。中野さんは対談の後、フリースクールの
アシスタントもされるようになりました)
先月のインタビューはこちら

中野さん「友達とか、他の人にボランティアをやっていることを話すと、
驚かれますよね。『お金もらえないんでしょ、なんでやってるの?』とか。
そう聞かれたときに、風間さんはどう答えてますか?」

風間さん「『自分が面白いからやっている』といった答え方をしてると思います。
でも、そんなに人にボランティアをやっていることを言わないですね。
僕が通っている中国語の先生に話したときも、『とってもいいことだけど、
どうして(無償で教えるの)?』と言われましたね。
僕からすれば、会社と違う関係というか『利害が関わらない関係』の方が
面白いんですけどね。」

中野さん「私も『何かを得ている』という実感がないと無理ですね。
まあ、楽しいからやっているだけなんですが。
私は平日の夜や日曜日にバイトもやっているんですが、これも楽しいから
やっているだけで。バイトにしろ『多文化』にしろ、脳の違う部分を使っている
気がするんですよね。脳のフル活用をしている感じ。
『多文化』に来るようになって、自分が変わったんです。
じつは、地元で日本語を教えていたころは、人とうまく関われなかったんですよ。
他のメンバーと関わるのが苦手だったんです。」

杉田「それはウソでしょう(笑)。」

中野さん「本当ですよ!そりゃあ、おとなしいわけではなかったですよ(笑)。
でも、地元でやっていた団体より『多文化』の方がメンバーの年齢が若いし、
サークル感覚で楽しいです。」

杉田「子どもプロジェクトでは時々盆踊りや遠足などのイベントがありますが、
参加してみてどんな感じでしたか?」

風間さん「去年の遠足で海に行ったときは、子どもたちがおぼれないように
気をつけていました。やはり子どもたちの安全には気を使います。」

中野さん「こっち(ボランティア)が大人で、あっち(被支援者)が
子どもなので、ボランティアといっても責任はあります。
時々、生徒指導の先生のような気持ちになることもありますよ。
外に行く時は、他の周りの人にあいさつしたり、(イベントを主催した)区役所
の人にお礼を言うとか、失礼な態度をとらないように気をつけていました。
連れて行った以上、見守るのは大事ですね。」

風間さん「スポーツ大会をしたときは『多文化』を応援してくれている企業の
方も参加してくださったんですが、子どもにとっても、大人とのかかわりを
勉強する良い機会になったと思います。」

杉田「子どもに勉強を教える時に気をつけていることはありますか?」

中野さん「私は、勉強を教える大人=先生というよりも、近所のお姉ちゃんの
感覚の方がいいと思って、なるべくいろんな話をするようにしています。
そして、子どもが話すことは聞く。子どもは分かるんですよ、ちゃんと聞いて
いるか、聞いていないか、というのは。」

風間さん「中野さんはみんなに慕われているので、見てて心がなごみます。
子どもにも『今日は中野ティーチャーはいるの?』とよく聞かれますよ。
また、勉強を教えている時、子どもって、本当は分かってなくても
『わかったわかった』と言うんですが、本当に分かったときは、目を輝かせて
『わかった!』と言うんです。そういう表情を見るとうれしいですね。
それに、数学が苦手だった子が自分からやるようになったり、普段話さない子が
自分から話し掛けてくるとうれしくなります。子どもは徐々に話す言葉が
増えていくように思われがちですが、あるとき急にいっぱいしゃべるように
なるものなんです。
子どもたちって、1ヶ月単位でどんどん変わっていくんですよ。」

杉田「親子日本語クラスはどんな感じですか?」

中野さん「親子日本語クラスは、親クラスと子ども(小学生以下)クラスに
分かれていて、今まで子どもクラスを担当していましたが、今日初めて親クラス
を担当しました。お父さんよりもお母さんたちが多かったです。
でも、『お母さん』といっても年が近いんですよ。私と(年齢が)1個しか
違わない人もいました。だから、何かを教えるというより、いろんな話を
しました。お母さんたちの中には『ここに来るのが好き』と言ってくれたり、
『ここでしか日本語をしゃべる機会がない』と言ってくれた人もいました。」

風間さん「僕が担当したお母さんも日本語をたくさんしゃべって満足して
いましたね。中国の方だったんですが、日本で働いていても普段は日本語を
ほとんど使わないそうです。日本語は『メニュー1』『メニュー2』『メニュー3』
だけで、厨房などでの従業員同士の会話は中国語しか使わないみたいです。」

中野さん「親子日本語クラスは7月からスタートしたばかりですが、
親クラスでは、子どもプロジェクトと違って、先生と生徒のような関係ではなく、
対等に話をするので、私自身も慣れるにはもう少し時間がかかりそうです。
子どもクラスでは相手が小学生なので、とにかく机に向かって勉強させるまでが
大変で、未だに試行錯誤しています。」

風間さん「中野さんはこの活動を将来もずっと続けていきたいですか?」

中野さん「『多文化』でやることに限らず、他の活動をしたとしても、
子どもへの日本語教育にはずっと関わっていきたいと思っています。
土曜日のボランティアだけでなく、進路ガイダンスなどで、子どもたちが今
置かれている現状を知ったので、その時々で自分のできることをやっていきたい
と思います。」

風間さん「ニーズはたくさんありますよね。私も同感です。
初めてボランティア講座に参加する人の中には『私にできるだろうか』と
思っている人が多いけれど、みなさんに『絶対大丈夫』と言っています。
『子どもたちに接したい』という気持ちがあれば、能力はあんまり関係ない
んです。数学が苦手だろうが、英語が苦手だろうが、ボランティア講座に
行ってみようという気持ちがあれば、それだけで大丈夫です。
大学生だけでなく、サラリーマンの人にも興味を持ってもらいたいですね。
一度来たら絶対に面白いし、飲み会もよくやっていますよ。」