信州大教授の木村仁先生は戸倉上山田とは20年来のつきあいで、卒業生とともに鋳金工房「鋳(いる)」を設立、上山田文化会館などで発表をされていました(このあたり詳しくはこちら)。
今回の参加作品は、かつて制作されていたこの地をテーマとしたシリーズのかたちを大きく変えての「復活」版ともいえるもので、千曲市社会福祉協議会の協力を得て、地域のお年寄りとともにキッズ学芸員が町に点在する万葉集歌碑の拓本をとり、これを鋳金にするというものでした。万葉集には千曲川を歌ったものがいくつか存在し、これが歌碑として万葉公園に設置されています。参加者はその歌の中の自分の気に入った一字を選んでそれを作品化しました。
このプロジェクトはこのように、万葉集に歌い込まれた千曲川を下敷きに、地域の中学生とお年寄りがアートを通して交流するというもので、「地域」をテーマとした今回の「とがび」を体現するような企画でした。
展示ではキッズ学芸員がプロジェクトの概要から鋳金の方法にいたるまで、懇切ていねいに説明。展示とは関係ないですが、キッズ学芸員のひとりは参加作家の逗留宿「戸倉ホテル」の息子さんです。
木村先生は毎年7月にかつて松代大本営のあった長野市松代の松代文武学校を会場に、「まつしろ現代美術フェスティバル」を主宰されていますが、10月29日より長野県小海町にある「小海町高原美術館」での「記憶・美術 現代アートシーンⅡ」に白川昌生ら「まつしろ」メンバーとともに出展されます。
(コメント:門脇篤)