2学年必修授業「未成年の主張2006」〜デザインの授業は大切です

中平です。必修授業の作品と授業の様子を紹介します。どこの中学校でもデザインの授業が行われています。ポスターや色彩構成などが授業の主流でしょうか。しかし、そのどの授業も制作時間が長い割りには、完成度を高めにくい教材であることも事実です。ポスター一枚の制作時間に20時間ほど掛けていらっしゃる学校もありました。20時間といったら、五ヶ月間です。五ヶ月ずっとポスターつくりに集中できる生徒は1割ほどでしょうか。とにかく、デザインの授業は、時間がかかるという印象があります。また、ここで考えたいことは、「デザインの授業とは、いわゆるグラフィックデザインやプロダクトデザインのことなのだろうか?」という疑問です。デザインというと、ポスターカラーを使ってべた塗りしている平面作品の表現方法の別称であるというイメージがありますが、本当は、形式は関係なく、「何を、どういった方法で、誰に伝えるのか」を考える授業が、デザインの授業であると、私は考えています。
私自身、もともとデザイン事務所に勤務していた関係から、専門は、グラフィックデザインなのですが、デザインの授業を学校で、デザインと意識して行うことは、2学年の必修授業「未成年の主張2006」だけです。この授業は、Nスパイラルの考えに則って構成されたデザインの単元です。「自分の主張したいことを、色と形、文字で伝えよう」というねらいで行われます。スキル学習題材として、写真のような文字のデザインを行います。これは、「漢字は感字」という小題材の作品で、トンパ文字を鑑賞後、漢字を使って、感じる字を書いてみようというものです。墨だけで色紙に、表現をすることで、デザイン表現の可能性を感じるのです。

次の写真は、単元のまとめとしての題材「未成年の主張」の作品です。ポスターカラーで自分の主張したいこと、好きな言葉、嫌いなことばなどを表現するのです。この作品は、サーフィンでできた波の形が「SURF」となっています。中学生にしては、なかなかのセンスです。この題材で、生徒は、文字の形とアイデアの融合や、色と形を工夫することによって、自分の伝えたいことが相手に伝わるということを学ぶのです。

もう一枚の写真は、「食べたい」という題名で、立体的に切って組み合わされた落ち葉の中にきのこが隠れており、落ち葉の輪郭に隠れるように「たべたい」とレタリングされています。二重三重に作品に遊びがあり、しゃれています。
また、この文字を使ったデザインの授業の素晴らしい点は、現代というボタン一つで言葉が伝わる時代なのに、数時間かけて、伝えたいことを伝えようというスローコミュニケーションの存在です。生徒にも、この話をします。「メールだと、言葉だけ一瞬に伝わるけれど、美術の作品は、言葉だけではなく、作者の人柄や考えていることなど、予期しなかったことが伝わるね。それが大事なんだよね。」
当然、この授業は、伝えたいことがなければ、伝える必要がなく、コミュニケーションが成立しません。今回の授業でも、「何も伝えたいことがない」と主張している生徒がいました。それもまた真剣な主張なのでしょうか?