中平です。夜のやねうら美術館についてレポートは、このまとめをもち、ひとまず最後にしたいと考えます。写真は、先日授業の中で行われた信濃美術館学芸員さんをお招きした「振り返る会」の様子です。
善光寺灯明祭り関連企画・「夜のやねうら美術館」は、今年で4回目を迎え、出発当初は中学生の作品のみを展示していましたが、講座参加の一般の方々の作品も展示されるようになりました。今年は今までで最高の133点が展示されました。また、入場者数も1100人前後から今年は一気に2246人に増加し、大いに賑わうこととなりました。善光寺灯明祭りの関連企画として出発し、初めは新奇な発想の企画として、知るひとぞ知る展示だったのですが、今や恒例企画として地元に定着してきたようです。以上の事実を考えてみると、4年目で、早くもスタート時の目標を達成してしまったと考えられ、大きな転換点に来ているのではないかと感じるのです。
美術館学芸員さんにお聞きすると、入場者数が増えることにより、今までは中学生作品に対し、その発想の面白さや作品のユニークさだけが受け入れられるだけでなく、中学生としての未熟さや作りこみの甘さに対する批判もアンケートという形などで届けられているそうです。例えば「作り方が雑」「大きなダンボールばかり使っていることは好ましくない」「作品の質が低い」などです。これは、これからの作品の質を高めるうえで大切なことなのですが、中学生に与えられた制作時間は、たった3時間であるという厳しい事実があるのですが、「お客さんが求めていることの質的変化」を考えざるを得ません。今までは、中学生の作品を中学生の作品だから見に来るというお客さんがほとんどだったのに対し、美術館に美術作品を見に来る、やねうら美術館に美術作品を見に来るお客様が増えたのではないでしょうか。そこが今後のやねうら美術館の解決しなければならない課題があると思います。もしも、作品の質を重視するのであれば、中学生の作品は出品せず、講座でしっかり作られた作品のみ出品するべきでしょう。逆に、企画出発当初の発想を大事にするのであれば、こういった中学生作品の表面的質の低さこそ大切なんだと考え、多少の批判は無視して進んでいくという姿勢が必要だと思います。どちらにしろ、美術館で一般の人々、中学生の作品を展示するということは、限界があるんだと改めて実感しました。美術館は、もっと大きな方向性をしっかり持ってこういった展示を進めていくことを、私個人としては臨みます。批判があっても、批判には動ぜず、「これこそが長野市に必要な表現なんだ。」と逆に長野市民を教育してやろうというような力強さがもっとあっても良いように思います。長野市民の方向性に合わせる展示も県立美術館として必要ではあるのですが、長野市民の意識や文化を引っ張る力強さもこれからは求められるし、そのきかっけとして、急先鋒としてこの「夜のやねうら美術館」が役割を果たせるのかという転換点に、今いることは事実だと思います。