櫻ヶ岡中学校の中平です。1学年必修授業の「和風でゴー」では、金屏風にアクリル絵の具を使って描画をする題材です。この題材のねらいは、構図です。「相反するもの」または「同じものの繰り返し」という、風神雷神構図やかきつばた構図に代表される日本美術の基本構図を用いて、構図の意味を感じるのです。
構図中心の題材ですが、描画の題材ですので、表現方法や描き方にも注目させたいです。「赤」を塗る場合、どんな赤を塗りたいのか、どんな風に塗りたいのかを考えさせるチャンスです。生徒は、「赤」は絵の具の「赤」であると思い込んでいます。甘そうな赤、熱い赤、楽しそうな赤、など自分が狙っている色に近づけたいと願う心を育てたいのです。
そこで、私は、ハートマークを、赤で描いて、生徒に感じさせます。つるっと描くと、こんなハートになるよ。いろいろな色を混ぜながらべたべた描くとこうなるよ。立体的に書くとこうなるよ。どこが違うかな?自分はどんな風に描きたいのかな?と尋ねていきます。生徒は、私の様子を見ながら「自分だったら、こうしようかな」と自然に考えるのです。
写真は、ある女子生徒がトレペに描いた下書きです。これだけを見ると、ただ描いただけの印象がします。この段階では、本人は、単に赤を塗ろうとしていたと思います。
しかし、私の「いろいろな描き方講座」の後、写真のような絵に変化しました。影がついて立体的で、味わいを感じさせます。赤が美しく感じられます。
全ての生徒が、アドバイスで変化することはないと思いますが、ちょっとした目当てというか、コツ、というか「ここ注意してね」「自分だったらどれで描きたいですか?」というような自分に振り返らせる教師の問いかけが、生徒にとっての新しい世界への扉を開けるきっかけになることがあると思いました。そのとき注意しなければいけないのは、選択肢を与えているようで実は一つしかだめだよ、というようなメッセージです。あくまで本人の意思で決めさせることが意欲や興味を抱かせる最大の要因ですので、いくつかの選択肢を用意して本人が選んだら、それは「全てオッケー」という心構えで、見守りたいと思います。