埼玉県文化芸術振興シンポジウム

櫻ヶ岡中学校の中平です。埼玉県にある文教大学の学生を中心に、越谷地区を美術館に変える活動を続ける「まちアートプロジェクト」の活動が先日報告されました。内容がとても深く、示唆に富んでいるので、文章を掲載させていただきます。アートと人との関わり、アートの中味の変化に関する文章が興味深いです。

去る 平成21年1月23日(金)「埼玉県文化芸術振興シンポジウム」で埼玉県越谷市の文化芸術振興活動事例としてまちアートプロジェクトの活動について報告して参りました。
<プログラム構成>

第1部:講演「アートと地域の有機的な連携によるまちづくりの可能性」
長田 謙一氏(首都大学東京システムデザイン学部教授)

第2部:「県内のアートNPOによる活動紹介」
『まちアートプロジェクトー越谷2008ー』 鈴木眞里子(代表)
『花の街ふかや映画祭2008』 強瀬誠氏(NPO法人市民シアター・エフ副理事長)

第3部:パネルディスカッション
コーディネーター 曽田 修司 氏(跡見学園女子大学マネジメント学部教授)
パネリスト 長田 謙一 氏、中村 誠 氏(埼玉県立近代美術館学芸主幹)

鈴木は第2部で、まちアートプロジェクトを行ったきっかけから、活動の経緯に沿って実感したアートプロジェクトの意義や可能性を報告しました。

「もっと多くの人に美術の面白さを知ってもらうきっかけづくりをしたい」という気持ちから、人々が生活する「生きた場所」である商店に作品展示をし、埼玉県越谷市の街全体を「美術館」にしたい、と考えたこと。
また、越谷という街を見直す中で見えてきた課題、特に「異世代の人々が交流し、表現する場の欠如」を埋めるために、展覧会前に行った様々な基盤作り。
そしてメインの、2008年展覧会準備から終了までの活動内容紹介では、作品出展者と参加店舗、両者が協働して作品と展覧会を作り上げる中で変化してきた表情や関係性、想いなどを沢山の活動記録画像と共に振り返りました。
最後に、今まで美術に触れることのなかった人達に働きかけることで美術に対する意識が変容したこと、また、それには作品「作る」「見る」場だけでなく、「伝える」環境づくりが大切だということを報告しました。

パネルディスカッションでは、地域の文化資源の発掘・活用や行政・企業・大学等との協働、NPO団体の継続的運営に係る課題について意見が交わされました。

特にアートを巡る状況の変化については、今なぜ美術館の外でアートをすることが必要なのかとの問いかけに、「アートがモノそれ自体でなく、関係性に変わってきているからでは」という話がありました。同時に、映像や演劇など分野間の融合によってもアートの捉え直しがされる中、アートプロジェクトは「現代的に捉えられたアートの戦場」であり、美術館や分野別施設は、その「ハイライトな戦場」なのではないか、という意見も出ました。

アートプロジェクト活動の課題としては、やはりどの団体にも共通して「持続性」があげられました。今アートプロジェクトの可能性や必要性が提示されていきながら、その問題はずっと消えない。活動を軸に「生きていける」仕組みづくりをもっと積極的に考えていかなければいけない、という言葉には会場の誰もが頷きました。

様々な活動実践からの声を聞き、今改めて地域に関わるアートプロジェクトとしての人間関係づくりの難しさ、面白さを感じています。
これからの活動の中でも「人と人」のつながりを大切にしながら、「アート」へのチャレンジ精神を常に持ちつつけていきたい、と感じたシンポジウムでした。

最後に、参加者の皆様と主催の埼玉県文化芸術振興課の皆様に深く御礼申し上げます。
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