櫻ヶ岡中学校の中平です。間が空いてしまったさくらびレポートですが、さくらびキッズも授業は盛り上がっていますので、続々と様子を紹介したいと思います。
3年生の必修授業「グラデーションマジック」。パステルの使い方などを小単元で学んできた生徒が「テーマは自由。主題も自分で決めよう」という課題に挑戦しました。3年間のNスパイラルカリキュラムにより、自分でテーマや主題を決める力をつけてきている生徒たちは、はじめ悩みながらも、自分のやりたいことを見つけて、絵画表現していきます。
写真は、野球好きの男子生徒による、作品名「一瞬に賭けた夏」。構想に時間がかかってしまい、実際に描いた時間は2時間程度。あっというまに完成したとき、周りから「おー」という歓声があがったほどです。このグローブの絵から、3年間使い続けたグローブへの愛着と、手のひらの感じが伝わってきます。この生徒は、比較的美術には興味がある生徒でしたが、ここまでこの題材にはまり込むとは私自身驚いてしまいました。この題材の8時間でどんな変化があったのでしょうか。やはり、「好きなものを描く」という課題が良かったのかもしれません。
写真の作品も男子野球部員の作品です。「脳」という題名です。
彼の脳の中は、このように、いろいろな興味関心が交錯している状態なのでしょう。それをそのまま絵にしたのです。美術表現という行為は、「見えないものを見えるようにすること」であると思います。自分の脳の中がどんな状態なのか自分で覗き込むと言うことは、個人的には楽しいかもしれませんが、他人も見てしまう形に表現するということは、抵抗があるのではないでしょうか。しかし、この生徒は、まるでテレビのチャンネルを回すかのように、楽々と表現しています。色使いや一つ一つのパーツの描き方も、丁寧に描いています。そして、何より、見る人が楽しめるように「謎」をちりばめているところが面白いです。
我々美術教師は、絵を描くと言う授業で、あまりに生徒に対し、教師の願いを押し付けすぎたのではないでしょうか。教師がやることを決めておいて「自由に描け」と難題をふっかけてきました。しかし、それはうまくはいきませんでした。生徒は実は、すでに描きたいことや気になること、などテーマや主題をもっているのです。その主題を表に表出する場やきっかけさえ備われば、中学生は自ずと表現し始めるのではないでしょうか。