さくらびレポート303〜絵画編@卒業制作:夢

櫻ヶ岡中学校の中平です。3学年卒業制作:夢、の作品をピックアップして、中学生や美術教育について考えています。

180作品ほどある卒業制作の中で、今日は絵画作品を集めました。よく考えると、ほとんどの作品が立体や、半立体、写真コラージュが多く、平面絵画作品はほとんどないことに気づきました。しかも、作者は女子ばかりで、絵画作品を描いた男子はたったの一名でした。

写真の作品は、「卒業制作では絵を描きたい。空が好きなので空を飛んでいる作品を描きたい」とずっと描き続けてきた女子生徒の作品です。登場人物の頭上から視点が見下ろしています。風とともに巻き上がる羽根が動きを出しています。空の色と雲の描写にこだわりました。

この作品は、ボンドに砂と絵の具を混ぜて描いています。描いている最中は、スプーンに混合絵の具をのせ、まるで生クリームを垂らしているかのようでした。ジャクスンポロックのアクションペインティングを彷彿させます。

画面は盛り上がっていて、砂はしっかりイラストボードに定着しています。思い付きではなく、徹底的に描ききっている様子が素晴らしいです。

180センチ×90センチのコンパネに模造紙を貼り、なんと全て手書きで楽譜と音符を書いています。しかも、音符は教会の形になっています。なんという根気と集中力でしょうか。作品の大きさと、細部にわたって丁寧に書き込まれているギャップが見るものの心を打ちます。

写真の作品の作者は、最近までどちらかというとマニアックで内向的な表現を得意としていました。しかし、この作品はどうでしょうか。明るく躍動的で今までのイメージと正反対です。

卒業制作ですので、何かを卒業したのでしょうか。興味深いです。

絵画のほとんどが女子である、ということの裏づけとして、アニメやコミックの影響が大きいかもしれません。そういった意味で、男子が男子のパワーを絵画や平面に表現するというリアリティーが失われている時代なのかもしれません。美術教育として行われる絵画表現も、今もう一度考え直さなければいけない時期なのかもしれません。