さくらびレポート298〜教材研究「ドローイングから文字に発展しないか??」@漢字は感字

櫻ヶ岡中学校の中平です。私は、中学校の美術必修授業では、独自に考案した3年間カリキュラム「Nスパイラル」を実践しています。今年でこの実践を初めてちょうど10年目ですが、10年間やってきて、やっと、更にどういう点で工夫したら良いのかわかってきたように思っています。

今、2年生の必修授業では、いわゆるポスターやレタリングの範疇に入るであろう大題材「ズバリ言うわよ!」を行っています。名前の通り、自分の言いたいことや伝えたいことを文字と色、形で伝える、視覚伝達デザインの基礎を学ぶ題材です。

遊び的導入題材「ズバリ撮るわよ!」では、くじ引きで引いた言葉を「テーマ」とし、数人のチームで身体で表現します。その一瞬を写真で撮影して、「うまくテーマが伝わっているかどうか」鑑賞会で吟味します。その時に更に工夫すべきことを生徒に尋ねると「おおげさに表現した方がいい」という共通の言葉が現れてきます。それが、最終的にまとめ題材まで続く学習すべき課題となるのです。

スキルを学ぶ「漢字は感字」では、墨を使って色紙に、漢字一文字で、感字を表現します。この場合、レタリングの基礎なので、お決まりの明朝とかゴシックは出てきません。そんなことよりも伝えたいことを、どう形や色を変えることによって、または組み合わせることによって、伝えることができるのか、そこを工夫するのです。

写真は、筆以外の道具「綿、割り箸、はぶらし、ビー玉、綿棒、スポンジ・・」などを使って記事引きした言葉を表現してみます。「水ぼわっく画」と私が名付けた、一種の造形遊びです。「堅い、柔らかい、強い、弱い、涼しい、暑い・・」などの言葉を表現しようと一生懸命になります。

ある時、私は授業をしながら、気づきました。言葉を、一回擬音に直すと、身体動作も風なって、表現しやすいんじゃないか??

例えば、「涼しい」だったら、「ぴゅー」とか「ヒュー」です。これを生徒に尋ねると、3人に聞けば3人とも全く違った表現になります。

そうか、言葉から一段、別の音に翻訳すればいいのか。そういう段階を踏んで表した「水ぼわっく画」が、一つ目の写真です。

表現の幅が増えているように感じるのは、表現と身体の動きが出てきたからではないでしょうか。うまく言えませんが、表現したいことを、一度擬音というか身体の動きで翻訳してみると、表現がしやすいかもしれません。

そして、最終的には、色紙に、墨を使って、漢字一文字で「感字」を表現します。

このとき、発想のプロセスに二種類あることを、生徒の様子から感じました。

一つは、あきらかに文字から、その印象から絵を想像して発想するタイプ。もう一つは、水ぼわっく画のような絵にも見えないし、字にも見えない形から、考えられそうな文字を発想していくタイプ。

この二つのどちらかに分けられそうです。

どちらにしても、5時間という短い題材ですが、表現のヒントの見つけ方、ひらめきを作品に変える方法など、おもしろいきっかけがたくさんあることがわかりました。