7月12日から開催(8月7日まで)される三津浜写真展「いっそこのまま」もうすぐスタートです。展示作品は写真(A3サイズ約120点)と8名の文章で構成され、じっくり三津への想いを感じることが出来ます。(6月6日UPのイベント情報参照)
会場のカフェフロアの設えもこだわりの空間になりそうです。楽しみですね。
集まった作品(写真と文章)の一部をご紹介します。
※作品(写真と文章)は別の作者が三津の街並を切り取った個別の作品です。
koho
まちをみつめる
いまにのこる伝統的な集落で、忘れられないところがある。高知県室戸市の吉良川町である。最初の印象は、ひとことで言えば生きている廃墟。普段でも風速20メートルを超えることは珍しくなく台風の折には50メートルに及ぶ土地柄、二階を極端に切り詰めた低い屋根の土蔵造りの家並みは要塞のようで、人の気配に乏しい。高知市街から車で2時間もかかるため、実際に過疎がすすみ観光化も不十分である。海岸沿いの国道から坂を上ると、かつては立派であったろう映画館が無残な姿をさらしている。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されながら荒れるに任せているような感すらある。
しかし、その町並みを丁寧に歩けば、かつては炭の産地として栄えたこと、現在は保水の悪い土地と高い気温を生かし枇杷や西瓜の全国屈指の産地であることなどがわかり、カフェやアートスペースを開いて町づくりに寄与しようとしている人にも出会う。厳しい風土のなかで、家並みを生かし生計を立てる術を模索しているのである。
まちは、そこに住む人々の置かれている状況を残酷なほど正確に反映する。来るたびに増える空き地、絶えることのない道路工事、魚と土ぼこりの匂い、出合う人のしわの数、吉良川とは比較しようもない春風駘蕩たる空気。三津のまちそのものである。しかも三津以外に住む人は二つの港に向かう主要道路しか知らない。
この状況の何を取捨選択するかは、三津にかかわる内外の人々すべてにかかっている。その共通のスタートラインは、お互いに、三津をよくみることにあるのではないか。三津にしかないものは何なのか、三津にないものは何なのか、それを通じて、まちの未来もまた浮かび上がってくると思う。
(アートNPOカコア 徳永高志)