「顔のクローゼット」アーティストからの便り

「顔のクローゼット」を実施したアーティスト/hiderino氏からのレポートです。* 顔のクローゼット公式ウェブサイトからの転載

昨日11月4日は「アートバトルin三津浜」での展示&映像作品上映。

今回の作品『顔クロ070805』は、これまでの3作品と大きな違いがあります。 それが映像作品。 今回はアートNPO QaCoA主催のアートイベント「四国アート88箇所&CO.2007」のプログラムのひとつ「アートバトルin三津浜」に参加させていただく形になったのですが、参加アーティストに課せられたテーマがありました。 「三津浜の記憶の深淵に迫る」なんとも抽象的で振り幅の狭さを感じざるを得ないタイトなテーマですが、僕のプロジェクトの一貫したテーマは“人”とそれを取り巻く社会や世界。 今回の「三津浜の記憶の深淵」、見事引き出して見せようじゃないかと挑んだ結果、Tシャツでの表現以外に映像を使うことが自然に思えました。

当日の会場の様子は3枚の写真。 それぞれクリックで拡大表示されます。
会場となる木村邸は古民家。 その風合いをそのまま生かして展示内容はシンプルに。 1Fには「東京3部作(作品No.070520,070526,070527)」と今までの試作品を展示。 試作品は手に取ったり拡げたり、自由に楽しんでもらえるようにしました。※試作品は未発表ですが、後日写真を公開したいと思います。 この1Fでは同会場を共同で使用するコンポーザーピアニスト石原公彦氏による音楽(Reminiscence 〜三津浜の刻〜)が中庭に設置された音響装置からBGMとしてかけられています。

2Fにあがり、奥の床の間には『顔クロ070805』と解説のパネルを展示。写真の床の間の向かい側には注文受付とサイズ確認用サンプルTシャツが並んでいました。 この空間で上映までの待ち時間、hiderinoと会話をしたり、展示を楽しんでいただいたわけです。 “待ち時間”というからには上映時刻のようなものが決まっているわけですが、何時何分からという決まりではなく、前出の石原氏によるBGMに仕掛けがあります。 実はBGMが数曲による構成のループになっていて、その中の1曲が今回の映像作品のために作曲されたものなんです。 その曲のスタートと同時にタイミングを合わせて上映も開始。

この曲と映像のいきさつを少し書かせてください。
当初の企画ではこの木村邸でカフェ営業をしながら展示と音楽、映像を楽しめるという空間になる予定でした。それがイベントの2週間ほど前の打ち合わせで“カフェ無し”に変更され、僕も石原氏もプランの変更を余儀なくされたのです。 それから数日、僕の映像が仕上がり、同じ会場でセッション的なことをやることになる石原氏に連絡を入れました。 映像を確認しに店まで足を運んでくれた彼は僕の映像を見終わるなり、少々遠慮がちに「映像に曲をつけてみたい」と申し出てくれました。 もちろん僕のほうは、そんなことはまったく考えていなかったのですが、聴いた瞬間に戸惑いなどは無く、特に作品について説明や補足もせずに彼に映像データを渡しました。 それからわずか4日後の夜、彼からの連絡。 音源CDを持って店に足を運んでくれた彼と2人で店のPCで映像と音楽を同時に流して見ました。 何も言う事はありません。 ピアノに向かい、譜面代わりに映像を見ながら即興演奏で作られたその曲は僕の映像作品のあらわすべきところを的確に捉えていたんですから。 こうして『顔のクローゼット』ショートムービーは僕と石原氏との勝手コラボによって見事競作として完成しました。

(hiderino)