朝井章夫展「循環とストレンジャー」に寄せて&作品解説

展覧会に寄せて
 かつては海運、交通の要所として、
多くの旅人と物資が行き交う「辻」を形成していた「三津浜」。
 静かに佇むこの地において、
繁栄を極めた町並みや建物は朽ち果て、
まちの誇りは海床に深く埋没し廃棄物が覆う。
 三津浜は美しく、かくも醜い。

作品解説
作家の朝井氏は、今年の春から秋にかけ、
三津の海に60回を超える潜水を試み、
その海床や海面からの風景を記録し続けた。
その数約600点。それらから厳選した「写真」を投影し、
海床から引き上げた「廃棄物」、
そして昔の三津浜の塩田にちなんだ「塩」とともに、
辻としての三津浜を象徴する「鉄製のクロス」を設置することで、
本プロジェクトのテーマである「三津浜の人々の記憶と再生」に
あえて反旗を翻す。
だが、それは作家の独善では決してない。
僅か数ミリのウエットスーツを通して、
三津浜の海に侵食された作家は、やがて「世界の肉」となって、
この地の記憶と意識を私たちの五感に届けるのである。
(文責:アートNPOカコア理事 田中教夫)