■いつの頃からか、音楽を演(や)る人たちのことをアーティストと呼ぶようになった。本当にいつの頃からかはわからない。ただ、ドメスティックの音楽業界でのアーティストの定義のようなものはどうやらないらしい。
■音楽といってもそのジャンルは多岐にわたる。演歌、アイドル歌謡、Hip−Hop、ジャズ、ロックンロール、アニメソングなどなど。これらのジャンルで唄って、あるときにはダンスも取り込んで表現するミュージシャンのことをアーティストと呼ぶわけでもないらしい。
■ここで一人の歌手(アーティスト?)を取り上げたい。演歌界に彗星のごとく現れた”ジェロ”である。彼はご存知の方も多いと思うが、彼のファッションは明らかに<ストリートカルチャー>であり<Hip−Hop>なのである。彼の見た目は、<アーティスト>という肩書きがしっくりくるだろう。しかし歌っている楽曲のジャンルは「演歌」なのである。
■作曲家の都倉俊一氏によれば、ドメスティックの音楽業界における<アーティスト>という呼び方は「ニューミュージック」が社会に認知される頃にどうやらドメスティックの音楽業界で使われだしたらしい。
■アーティストをおおまかにざっくりとかなり乱暴に言って、何かしらクリエイトするひとたちということにすると、音楽業界ではシンガーソングライター、つまり作詞も作曲も歌唱も自分でクリエイトするミュージシャンということになるのだろうか?そうすれば、ニューミュージックが登場したあたりが<アーティスト>と呼ばれるルーツになったと一応は納得できる。
■しかしながら現在のドメスティックの音楽業界では、作詞や作曲の専門家に楽曲を提供してもらって、それを歌唱する歌手もアーティストのカテゴリーに入れるようだ。たとえば、最近カムバックしたSPEEDは、伊秩弘将が作詞作曲をしプロデュースも手がけている。しかし、呼びようによってはSPEEDというユニットもアーティストと呼ぶのである。今年ブレイクした、ドリカムに楽曲を提供してもらった青山テルマしかりだろう。
■結局結論めいたものは出ないが、ドメスティックの音楽業界で言うところの<アーティスト>とは、大まかにざっくりと言ってしまうと、CDというメディア(最近ではネット配信が主流のようであるが)を制作する際の主体となった歌手のことを言うのであろうか。ならば五木ひろしも水森かおりもアーティストと呼んでよいのだろうか。しっくりこないなぁ。
(text:井川雅人)