「ビルド」のあとは「ふれあいエスプ塩竈」へ。ここは10年ほど前にできたそうで、建物もすばらしいのですが、こどもの創作室があったり、屋上が庭園になっていて水あそびができたり、さまざまな企画を行っていたり、ソフトの面でもたいへん充実した施設だなと思いました。
エスプの後は塩竈マリンゲートそばの大漁市場で刺身定食1000円を食べ、塩竈本町(もとまち)商店街へ。東鳴子と交流がある商店街だそうで、実はここをたずねることが今日のメインの目的でした。東鳴子と塩竈をアートで結ぶような企画ができないか、というのが今私が考えていることです。
本町商店街は率直に言ってかなりさびれた商店街でした。それこそ東鳴子をはじめて訪れたときのような印象です。
「壱番館」なる建物に「ラ・ムスタッシュ」を訪ねました。手づくりの靴をつくっているお店で、ご主人は「商人(あきんど)塾」という経営塾の塾頭もしているそうです。お話をうかがいました。
この町は、景気がよく、何をしなくてもものが売れた頃の後遺症に苦しんでいる。何か新しいことを町や商店街としてやろうとしても、なかなか動きがにぶい。そこでフットワークの軽い人だけでも連携して何かをはじめようとはじまったのが商店街に大漁旗を飾ることだった。みなと祭りやお正月のおりなど、商店街にえんえんと飾るのだが、最初はひもの結び方ひとつわからず、うちの前には飾らないでくれという店もあったりしたが、今年で3年目。漁師をしていたお年寄りからいろいろなひもの結び方を学ぶ講習会を開いたり、大漁旗を飾ったり、片付けたりするおりにはいつもは手伝わない顔も見かけるようになった。商売とは直接結びつかないこうしたことをつづけることが大切なのではないか。
大漁旗を通じた町の「垣根はずし」は東鳴子ゆめ会議の取り組みと通底するものだと思います。
それが直接何かの役に立つとか、利益になるとかいった経営的な視点とは別に、町を住みよくするために必要なことは何なのだろうという生活者としての視点、幸福の追求は、経済的な成功・不成功といった単純な区割りで幸・不幸が決定されてしまうかのような世界観への幻滅や閉塞感を経験した後に人々がたどりつきつつある、地に足のついた世界のとらえ方なのだと思います。
そしてそれはアートの在り方とたいへんよく似ています。もしアートがそれをひとつの方法として提示できたら、そしてまたアートをそうしたものとして受け入れることができたら、それはアートの力となるだけでなく、町の力、ともに生きることの力となっていくのではないかと思います。
写真は造り酒屋の浦霞、御釜神社、本町商店街。
(コメント:門脇篤)