通い湯治10か月番外編「岩手・土沢で搬出作業」

「アート@つちざわ」の行われていた岩手県花巻市土沢へ、搬出作業に行って来ました。会期は先週末までだったのですが、風邪で寝込んでいたため搬出作業を今日まで延期させてもらっていました。
私が展示したのは例によって毛糸で、町の裏通りに沿って流れる水路に、えんえん毛糸の枕木を敷くというもので、会期は一ヶ月強におよび、会期中は一度もようすを見に行っていなかったのでいったいどうなっていることかと思ったのですが、不思議にも実にきれいに保たれていて、ほとんど町の景観のひとつと化している風がありました。
実は設置しているとき、この水路周辺はけっこう蜘蛛の巣や雑草などで雑然としていたので、毛糸はさぞたいへんなことになっているだろうと予想していたのでたいへんびっくりしました。水路沿いの方々がかなり気を配ってくれたとしか思えません。

急いで撤去作業を終わらせるとあたりはもう真っ暗で、萬鉄五郎記念美術館の方とお話をするのがせいいっぱいで、町の方とはごあいさつ程度しかできませんでしたが、もし毛糸を設置したことで、これを通して町の方が水路についていつもとはちがう意識を働かせてくれたなら、私の今回のアートは成功だったのではないかと思いました。
帰りにここでつくっている佐々長の味噌と醤油を買って、土沢を後にしました。
鳴子でも、川渡温泉のみやま旅館さんが土沢と縁があり、今度「アート@つちざわ」についてお話を聞きに行こうという話も出ているそうです。また、鳴子と交流のある宮城・塩竈では市役所や商店街もツアーを組んで視察されたそうで、この小さな町の仕掛けた町をあげてのアート・プロジェクトは、近隣ではたいへんな話題です。
それは萬鉄五郎記念美術館やリーダーシップをとった町の方々の先進性や企画力、行動力はもちろん、私が感じるに、町のほとんどの方、特にお年寄りが、「おもしろいねー」「たのしそうだねー」と、本当に興味をもって受け入れ、鑑賞者としても実にいい共鳴をしているあの底なしのホスピタリティによるところがたいへん大きいように思いました。第二の「アート@つちざわ」をねらう地域は、まずこの人づくりからはじめねばならないことでしょう。

(コメント:門脇篤)