通い湯治その138「通い湯治1周年と鬼首小学校訪問」

「今年は雪が少ないねぇ」と東鳴子で立ち話をしたおりに聞いたのですが、ここはすっかり雪景色です。鳴子温泉郷の中でも一番奥まったところにある鬼首(おにこうべ)。本当にいいところです。
この雪に白々とした田を見て、ふとJR陸羽東線に乗って東鳴子にはじめて降り立った日のことを思い出しました。それはちょうど1年前の今日のことで、大崎平野を横切って進む陸羽東線からは、一面雪におおわれた田が山すそまで広がっていました。
そしてあっという間だったこの一年、じっくりと振り返る間もなく、大沼さんから「鬼首小学校の先生がおもしろいことを考えている」との通報を受け、一路鬼首へ。

鬼首小で迎えてくれたのは「不審者情報」。子どもたち、大切にされています。それから小学6年生の担任の佐藤先生が現れました。
これまで、近くの水力発電所や「きつね森王国」、「鳴子ツーリズム研究会」のことなど、鬼首の現在の取り組みについて、旅館大沼の大沼さんはじめみやまさん、幸男さんなど外部からの講師の話を聞いて学んできた生徒たちが、今度は「未来の鬼首」をテーマに、それぞれの「願い」をかたちにしていく、というのが卒業までの活動です。そしてそれは願うだけでなく、どうしたらそれがかたちになるか、その実践的な「企画力」を育む、というのがこの総合の時間のねらいだと佐藤先生は語ります。
たとえば、自然豊かなこの鬼首を守っていくと同時に、外部の人にも訪れてもらいたい、と生徒たちは考えています。では、どうしたらそれを実現できるか。
カブトムシの来る木を植えることで観光客を呼ぶ企画を立てている子どもや、特産品を企画している子どもなど、その方法はさまざまなで、そんな中で鬼首のよさを写真集を制作することでアピールし、鬼首の自然やいいところを将来にわたって守ていきたいという企画をしている8人の生徒さんに、写真集の編集の仕方や効果的な広報の仕方などをアドバイスしたり、いっしょにつくっていくことになりました。
佐藤先生のお話をうかがっていて、「アート湯治祭」も参加している「アサヒ・アート・フェスティバル」の長野の参加企画に「とがびアート・プロジェクト」がありますが、これを牽引している中学校の先生・中平先生などと共通していると思うのは、生徒の試みを即実践へと結びつけようと本気で考えている点で、ただつくってよかったね、で終わらせず、学校内で閉じることなく社会へ開かれた教育を行っている、行っていきたいという意気込みにはたいへん引き込まれました。
最初にお電話で軽くお話を聞いて、今日来るまでに写真集ものスタイルや発表の方法などについて私なりにいくつか考えてきたのですが、いずれも打ち合わせするうちに佐藤先生も同様のことを考えていたことがわかり、話は本当にとんとん拍子に進みました。あとは来月の総合の時間を待つだけです。

ゆめ会議の大沼さんにも結果をご報告すると、「本当にいい先生ですよね。もっと早くからいっしょにやれたらよかったですねー」とのことで、まったくそのとおりなのです。地域で何かをしようという希望に燃えている方や企画をもっている方は、あきらめずにぜひ近くでやはり同じようにおもしろいことをしたいと思っている人をさがし、気軽に声をかけることが大切だと思います。
特に来年の「アート湯治祭」では、地域とアートと教育という三者のリンクがうまいぐあいにいくといいなぁと思っています。
鬼首小を後にするころには、あたりはすっかり暗くなっていました。
また新たな通い湯治の1年がはじまります。

(コメント:門脇篤)