アートin湯治(AIT)ドキュメント⑲ 「あらら。パフォーマンス」

「アート・ツアー」、越後さんの解説が終わった後は、パフォーマンス・ユニット「あらら。」によるパフォーマンスが、御殿湯駅構内ではじまります。
右図は、パフォーマンスに先立つ数時間前の画像。東鳴子ゆめ会議メンバーがきれいに駅舎内を掃除し、椅子や縁台を配置。こうしたメンバーの協力関係あっての企画です。

そうして始まった「あらら。」の演奏。
まずはドラムの坪井さんが「あらら。」を代表してあいさつ。
「ジャズって知ってますか? お好きな方? じゃ、即興って、知ってますか? 楽譜や筋書きがなく、その場で組み立てるスタイルです。ボクらがやるのはすべてが即興なんです。ためしに、ちょっとみなさんの知ってる曲で、ボクと増田くんが即興演奏をしてみます」

そこでドラムの坪井さん、キーボードの増田さんが演奏を始めます。湯治場に、かなりおしゃれな空気が漂います。
「どうです? 今のはもとの曲がありますが、今からは本当に何にも決まってない曲をやります」
やがて増田さんの指から美しいテーマが切り出され、そこへ坪井さんのドラムがからみはじめた頃、ホームに上り電車が入ってきました。電車を降りた乗客が、演奏するふたりのうしろに広がる窓に現れては消える中、ふと、その中に挙動不審な女性がひとり。

やがてその白い衣装の女性は、演奏に聞き入るこちらを凝視しはじめます。演奏も段々激しくなっていき、それにあわせて女性の動きも激しさを増します。そしていつしか彼女はふたりの演奏者に合わせてパフォーマンスを行っているではありませんか。
そう、この上り電車でやってきた女性こそ、「あらら。」3人目のメンバーであり、ダンサーの鷲野礼奈さんその人だったのです。

それはは30分にも及び、その間、緊張がとぎれることなく、3人の息の合ったパフォーマンスは繰り広げられました。まったく打ち合わせも何もない、というのが信じられないほどの完璧なものです。
やがて坪井さんから、いちおう終わりです、とのお知らせがありましたが、観客のみなさん、もっと見たい、聞きたいとのことで、「では、今度は平和な感じで」と、坪井さんがお題を出します。
増田さんがそれにこたえるように明るい音色を奏でると、鷲野さんも陽気な雰囲気でからだ全体に号令をかけます。
こうしてあっという間に1時間ほどがたち、観客は大満足のうちに「あらら。」パフォーマンスは終了しました。

(コメント:門脇篤