ブータン、「祈り」は風に乗って

ブータンではいたるところに祈祷旗(ダルシン)がはためいています。布にびっしりと細かい文字で書き込まれた経文が、風に揺れる度に祈りとなって空に放たれるわけです。

マニ車もよく見かけます。水車仕掛けのマニはカランカランと鈴の音をあげながらほがらかに回り続け、人々は口々にお経を唱えながら仏塔や寺院を時計回りに回り、手持ちのマニ車を回し、建物の壁に一列に並んだマニ車を押す。

それらのひと回りのひとつひとつが祈りです。こうしてブータンの全土で、人力と風力と水力という再生可能なエネルギーが、日夜祈りを発信し続けているんです。

それに比べて日本はどうか、とぼくは考えずにいられない。暮らしの中にかつてあった祈りの機会は少なくなり、ひとりひとりの祈りの力もまためっきり衰えたのではないか。

ブータンの人々は、地球温暖化による気候の異変を敏感に感じ取っており、ぼくの知人たちはそれを「山や川の神々が怒っている」せいだと言っていました。

辻信一

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