みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?エクアドルのワダアヤです。
インタグのカルロス・ソリージャさんの来日イベントからひと月ほどが経ちました。カルロスが語ってくれた森の大切さ、水の大切さ、鉱山開発の乱暴さや危険さなど、覚えていらっしゃるでしょうか。つい最近までインタグにはカナダ系の鉱山開発企業が、日本企業以上の横暴を働いており、日本企業がしたことなど、記憶の彼方に行ってしまいつつありましたが、その爪痕がまだ色濃く残っていることがインタグ新聞に載りました。今日はそのご紹介です。
その前に、ちょっとインタグ新聞という小さな新聞社をご紹介します。
日本政府・企業との大規模鉱山開発プロジェクトによって起こりつつあった環境、健康、社会問題に対してどう対処したらよいかというワークショップが行われたとき、インタグの農民たちが協力し合って、鉱山開発ではない、持続可能なオルタナティブを選択できるようにするためには、情報が圧倒的に足りない、そしてそれを伝達する手段がないことに、大きな障害があるということに人々は思い至りました。そして生まれたのがインタグ新聞です。
このインタグ新聞は、2000年12月発刊されました。当初は電気がないため、テレビもラジオも聞けなく、ましてやインターネットなど聞いたこともない頃、情報量が圧倒的に少なかったインタグに活字の情報をもたらしました。
インタグ内外での鉱山開発社の動き、自治体や政府の見解、インタグ内でのイベントの紹介だけではなく、インタグ内外(世界も含む)のニュースなども載っています。この新聞のおかげで、インタグの人々の世界は飛躍的に広がっただけでなく、人々の識字率や読解能力は上がり、一部の青年たちも編集部に加わり、書くことを覚えました。
またこの新聞社主動で、インタグに小さな図書館ができました。現在はもっと大きな図書館&情報センターの設立のため、資金繰りに走っています。
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「調査結果はフニン村の水は汚染ありと示唆」
(2008年7・8月号)
ロビン・ホームズがフニン村の水の解析を行おうとしたとき、この水が汚染が検出されるとは思っていなかった。ホームズさんは、アメリカのオバーリン大学の生物化学学の学生。日本のビシメタルという鉱山開発会社が1991年、1996年に当時の採掘権を持つ地域のサンプルを採取するために残した立坑(注:ボーリング調査したときにあける穴)から出る水のサンプルを検査するために、フニンにやって来た。この調査をするにあたって、ホームズさんは、鉱山開発の影響とその持続性の情報を広めることに寄与したいと話す。そしてその結果は、実に驚くべきものであり、警鐘をもたらすものであった。
< ヒ素、鉛、カドミウム >
ホームズさんはキトの研究所に、そのサンプルの中に銅、ヒ素、鉛、カドミウムの有無を調査してもらうために提出した。これらの4つの物質は、銅山開発が行われるときに、出てくるもの。彼女は、300メートルほどの深さの穴をほると、地下の化学物質が水などに沁みこむ。そしてそれは人体や川自体に悪影響を及ぼすと話す。
研究所は、銅は、基準値内の量のみ検出されたが、ヒ素、カドミウム、そして鉛の検出量は高いと報告した。ヒ素は、世界保健機関(WHO)が基準値と示す 4倍もの量が検出された。カドミウムは7倍、そして鉛が9倍もの量が検出された。
この水を飲むということは、人体に深刻な健康被害を与える。WHOによると、ヒ素は、皮膚障害、循環器疾患、ガンを引き起こす。カドミウムは、腎臓疾患とガン、鉛は子どもたちの身体・知的能力の発達障害、腎臓疾患、そして成人の高血圧症などを引き起こす。ホームズさんは、人々が使用する水がどこの湧水から来るのか早急に調査するひつようがあると強調した。
< もっと調査を >
彼女は、まず、どこに立坑があるのかを見つけるのが難しいという。1991から1996年にわたって、ビシメタルは24つの立坑をあけた。当時、鉱山開発側の情報によると、19個は枯渇しており、5つには水があった。3週間の調査期間中に、ホームズさんは、水があった5つのうち2つの立坑を見つけた。そのうちのひとつはすでに枯渇しており、もうひとつの立坑からサンプルを取った。問題は、10年以上ものときが経ち、ほとんどの立坑は雑草や倒木などに覆われており、ほとんどの人がどこにあったか覚えていないことだ。だから立坑を見つけるのは至難の業である。
さらに、資金不足のため、ホームズさんは調査をさらに続けることができなかった。さらに、クロム、硫黄、鉄、その他人体に影響を与える物質の検査も行いたかった。なにより、彼女は、立坑から流れる水が、生活用水、農業用水として使われる水に影響しているかどうかを調べることが重要と語った。まずは、私たちのそばに流れる小川の水を検査することが必要だろう。
調査は完遂されなかったが、調査結果は、鉱山開発による汚染は長い時を経てもなくならないということを知らしめてくれた。そして忘れてはならないのは、12〜17年前に行われた埋蔵鉱物の調査にすぎないことだ。採掘活動はこれ以上の汚染をうむことになるのである。検出された汚染に関して、ホームズさんは、フニン村の人たちにとっては喜ばしいことではないけれど、水は本当に大切なものなので、この情報はできるだけ広めるべきと語った。
人々の闘いの精神は、フニン村滞在中のホームズさんの心を揺さぶった。「希望を持ちながら闘い続ける人々は印象的。そしてたくさんの質問を抱えてやってくる外国人によく耐えてくれる」と振り返る。「この場所は美しく、そして静かなところ。でも世界はそっとしておいてはくれない。」
(翻訳:和田彩子)
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