クジラの問題から思うこと

じつは、今回の「事件」が起こるまで、クジラの問題にあまり向き合ってこなかった。しかし、グリーンピースのスタッフが逮捕されたと知って、仕事の合間に少しずつ勉強をはじめた。いろんな情報に目を通すなかで、特に多くの人に知ってほしいと思ったのが「奪われた鯨肉と信頼」というレポート。http://web2.rederio.org/gp/doss.pdf

「調査捕鯨」の船員からの「内部告発」ともいえるようなインタビューが掲載されている。(P24〜27)
「調査捕鯨」という名の下に公式に発表している捕獲数より多くを捕獲し、それらが売られていること。その一方で、とり過ぎて処理できない鯨の「雑肉」を大量に捨てたり、調査サンプルが多すぎて、調査できずに余っていることなど驚くべき内容が掲載されている。

しかし、私が一番驚いたのは、以下の話である。
(レポートの27ページ)

〜〜〜〜〜〜〜 ここから引用 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「クジラの病気ですね。これが意外と結構多くて、ガンなんかも結構発見されるんですよね。例えば、肝臓ガンとかのクジラも。でも肉やらはそのまま処理して一般に売られるわけですよね。これも大問題だと思いますよね。」

Q、それは、具体的にもう見て明らかにガンだって分かる?

「それはもう鯨研の人が必ず写真撮るんで、それは証拠もあるし、サンプルも採ってると思います。」

Q、ただ、それは同じように肉は普通に売られるわけですか?

「その部分だけは捨てますけどね。ただ肝臓だけがガンで、肝臓だけ捨てて他の肉は取ったら、元ですからね、怖いですよね。たぶん、鯨研さんはいっさい発表してないと思いますけどね。その病気に関しては。」

Q、それはかなり頻繁に見られるものなのですか?

「頻繁に見ますね。ほぼ毎日のように病気のクジラは。胃潰瘍だったり、あとガン細胞は結構多いですよね。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 引用ここまで 〜〜〜〜〜〜

これを読んで、いろんなことを思った。なぜ、これほど重要なことが問題になっていないのか? マスメディアで報道されないのは何故なのか?

ガンになったクジラのガン細胞を除いた鯨肉が売られていることも問題だが、最も重要なことは、病気のクジラが多く、ガンのクジラが多いということ。
クジラが病んでいるということは、海洋の環境(生態系)が病んでいるということだ。

「持続可能な捕鯨」を推進するためにもクジラの病気調査はとても重要だ。
マスメディアは「調査捕鯨」の調査結果を取材して、報道してほしい。
病気が増えたら「持続可能」ではなくなるのだから。捕鯨派の人たちこそ海洋生態系を守る運動に取組まなければならない。

人間はこれまで海を無限に広いもののように考え、汚染し続けてきた。
農薬や合成洗剤、工場廃水などの有害化学物質を捨てるときに海洋生態系への配慮に欠けていた。核兵器の製造工場や原子力発電所から出る放射性廃棄物の一部も海に捨ててきた。

そして今、核燃料再処理工場からの放射性廃棄物を海に捨てはじめている。
本格稼動すれば、大量の放射能がさらに海を汚染していく。青森県は、海に放出されるトリチウムやプルトニウムなどの放射能で魚が汚染されると予測している。
http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/aomori_shiryo060124.htm

「海」という字に母が入っているように、海は私たち生物全体の母である。
そして地球は、私たちの家であり、あらゆる生物は私たちの家族である。
今、私たちの家族であるクジラが病気で苦しんでいる。クジラに病気が多いということは、魚にも病気が増えている可能性が高い。

まわりを海に囲まれ、長い間、海の恵みによって生かされてきた私たちが今度は、海を守る番だろう。

これまでナマケモノ倶楽部は、森を守る活動には熱心だったが、海を守る活動にはあまり熱心ではなかった気がする。これからは、森と同様に海のことも学びながら海洋生態系を守る活動にも取組みたいと思う。

(ナマケモノ倶楽部世話人 中村隆市)