エクアドルツアー報告その1

3日前にエクアドルのツアーから戻った府中のナマケモノ会員・深津高子です。日本に帰ったとたん「米金融危機」のニュースが流れ、どの新聞の第1面も経済一辺倒の日本の報道に圧倒されています。

数日前まで霧深い朝のインタグの森をゆっくりと歩いていたのに、日本に戻ってくるとあのスローで豊かな感覚が抹殺されてしまいそうで、自分の感覚を再確認するためにも、またエクアドルという「ナマケモノ倶楽部」が産まれるきっかけになった国を初めて訪れた印象を書いておこうと思いメールしています。

今回のエクアドル・ツアーでは、新憲法のこと、銅山開発、森林農法のこと、日本政府の援助による下水道処理問題、蘭と昆虫の相互依存関係、美味しい調理法などなど、実にたくさんの多様な学びがありましたが、その中でも特に私の学びは、「歩く」ことと、「木を植える」楽しさでした。(後者はまた別の機会に書きたいと思います。)

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 「エクアドルに飛行機で行く」 「カフェスローに車で行く」 「府中駅にバスで行く」など、今まで私にとって何処かに「行く」とき、常に交通手段にお金を払って行くのがあたりまえで、長時間歩いて行くという「無料だけど時間のかかる手段」は殆んど考えられませんでした。

ところが今回、美しい民族衣装を身にまとい黙々と山道を登るキチュアの人々の生活を垣間見、二つ山を越えて2時間もかけてカブヤ製品を恥ずかしそうに笑って歩いてくる女性グループに会い、またインタグ新聞の編集長マリア・エレナが、自宅から毎朝1時間20分歩いて仕事場に行くことを「かけがえのない素敵な時間」と生き生きと表現するのを見て、自分の中の「歩く」という言葉の固定概念がぐらぐらと崩れ始めました。

つまり時間をかけて、その渦中をも楽しむ「歩いて行く」という選択肢もあったんだ!という発見です。

また今回、ラ・フロリダやエル・ミラグロにいるカルロスやアンニャに会いに行くときも、待っている彼らを想像しながら「歩いて行く」時間がこんなに楽しく、嬉しく、また道中の鳥や花を見つけたりする時間がこんなにワクワクするのだという再発見がありました。
そして汗をかきかき、一本橋をドキドキしながら渡り、やっと辿り着いたときの「再会の喜び」の深さも、便利でファストな「車で会いに行く」時とは全く違う感覚がしました。

どうやら忙しい日本にいる私のカラダは「連れて行ってくれる道具」にどっぷり依存し、たどり着くことが目的化してしまい、一番人間らしい二足歩行、つまり「自分で自分を運ぶ」という基本的な感覚がすっかり抜け落ちていたようです。

まるで歩き始めた赤ちゃんの最大の喜びがそうであるように、本来人間は安心感さえあれば、もっともっとどこまでも、いつまでも歩きたい動物なのではないかと思います。

今回の旅の道中で、トージバの渡邊さんと「日本に住む自分達のライフスタイルを変えない限り、銅山開発や、その他の自然破壊は無くならないと思うんだよね・・・」と話したことを思い出しました。

鉱山開発で苦しむインタグの人々を見て思ったのは、先進国の住民である私たちが、意識して銅やその他の地下資源からできている様々な商品への依存を減らし(例:貨幣:特に10円玉、熱の良導体としての電線、車の車体などの消費材)、既に在るものをクリエイティブに活用する生き方を選ぶことで、鉱山を掘る必要性を地球上から永久的になくせると思うのです。

そして人間の生活に「歩く」ことを取り戻すこと。
またナマケモノ倶楽部が提唱するスローな暮らしで、無駄なお金や電力消費を減らせます。また大国の貨幣経済に振り回されるような生活からも解放され、人間が本来持つ潜在的な力が蘇り、もっと能動的な楽しい生活ができるんじゃないかとインタグの森を歩きながら思いました。

「歩くこと」は、便利さに埋没していたカラダの主体性が自分に戻り、移動に「自家エネルギー」を使うことで、もっと生きることへの「主人公感」を取り戻せると思います。

また「歩くこと」は、車に乗るよりずっとスローで、電子メールに対して手紙を書く行為や、電化製品に頼る便利な生活からシフトして手を使う丁寧な生活を取り戻すことと同じだと思います。

なんだか米株価に一喜一憂する日本社会の異常な状態に触発されて、エラク抽象的な文章になってしまいましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。

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★最後に:
今回のツアーを企画してくださったウィンドファームの中村さんとスタッフの皆様。特に、私たちの通訳から食事の世話、ホテルの予約から問題解決など全てをサクサクッとやってくれたナマケモノ倶楽部・スローワーターカフェ・ウィンドファームの現地スタッフである和田彩子さん、本当にお世話になりました。

そして笑顔で黙々とクリキンディで仕事をするやさしい夫のエクトルさん、そして大人の話や会議にもずっと忍耐強く付き合ってくれた娘のムユちゃんには感謝してもしきれないくらいです。並びに参加者8人との貴重なスローな会話の時間にも心から「ありがとう!」

そんな日本でも、キンモクセイの香りに救われている深津高子より