どうやって、ポスト311を生き延びるか?

環境運動家、シンガーソングライターで、ナマケモノ共同代表のアンニャ・ライトから、ポスト311へのメッセージが届きました。できたら、デモと選挙に行く前に、読んでみてください。辻信一

■どうやって、ポスト311を生き延びるか? アンニャ・ライト(翻訳:辻信一)

「 どうやって安全に扱うかだれにもわからない、しかも何千、何万年にもわたって、すべての生きものにとって測り知れない危険であり続ける、強毒性の物質を大量につくり、ため込む。どれほどの繁栄もそれを正当化することなどできはしない」 (E.F.シューマッハ—『スモール・イズ・ビューティフル』より)

大惨事をもたらしたあの巨大地震と津波の後、日本と世界の人々が訊いた最初の言葉のひとつは、菅首相の「放射能漏れの報告はない」というものでした。私が本当に心配になったのは、まさにその時です。

私の予感どおり、菅首相が手にしていた情報は間違っていました。原子力安全神話をはびこらせるためにすっかり虚偽体質になっている組織には当たり前の、その場しのぎの嘘だったのです。

私はオーストラリアという、一応は安全な距離を隔てた場所から悲劇の展開を見てきました。菅首相は東京電力の幹部に「どうなっているんだ」と怒鳴る。東電は日本国民に、「放射能によって直ちに被害が出る危険はありません」と言う。南相馬市の市長は訴える。「政府は我々に何も言ってくれない。我々は孤立している。我々を見殺しにする気か」と・・・

そして、日本の庶民たちは言う。「こんな危険な目にあうくらいなら、もっと少ない電気で生きていきたい」と。

私はそこに希望を見るのです。この呟きが食卓での話し合いへとつながり、それが集まって反原発デモの耳をつんざくような大合唱へと育っていくことを。その声はやがて、これまであまりにも長く経済という巨大機械の効率性のために、人間性を犠牲にしてきた権力者たちの耳に届くことでしょう。

もうみんな知っているのです。原子力は安全だというのが嘘だったということ。企業にとっては、政府にとっては、いのちより、経済的利益の方が大事だったのだ、ということ。本当のことを知ることによって、私たちは自由になれるのです。

ある意味では、私たちは長年、この日を迎えるための準備をしてきたのでした。そう、だれもが「生き延びる」ことを選ばねばならなくなる日のために。ナマケモノ倶楽部をつくったのもそのため。「ナマケモノ的に生きる」とは、この地球を壊すことなく生きる術をあみ出し、実践することに他なりません。

では、今、私たちにできることは何でしょう?
自分の本能を信じること。
自分の声を見つけること。
地域・コミュニティとつながること。
亡くなったいのちを思い、喪に服し、
しかし同時に、いのちを祝うこと。

私たちの涙が溢れて、慈愛の海となりますように。私たちの怒りが旧来の搾取のシステムを土台から揺さぶりますように。私たちの愛が、孤立の中で未来への希望を見出せないでいる人々の心に届きますように。そして私たち自身も、よりスローでスモールでシンプルな生き方へと、シフトする勇気を見つけられますように。